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半膜様筋と内側半月板の連結に関する新たな知見と半月板Ramp lesionとの関連

半膜様筋と内側半月板に連結があることはわりと知られている話ですが、より詳細な解剖的構造を調べた論文1)が出たのでまとめます。前十字靭帯損傷時に合併することのあるといわれる内側半月板のRamp lesion(ランプ病変)との関連についても述べられています。こういう解剖の論文って面白いですよね!

内側半月板後角の半月板損傷は、Hambergら2)によって最初に記述されました。しかし、1988年に”Ramp lesion; ランプ病変”という用語を造語したのはStrobelである3)。ランプ病変は、「半月板後節後角と関節包の接合部および/または半月脛骨靭帯(meniscotibial ligament)の後方縦断裂」と定義されています。

過去の複数の研究において半膜様腱は主な脛骨への付着に加えて、遠位の関節包、半月板領域へ隣接した関節包への付着について報告されています。半腱様筋の分枝は後方関節包と内側半月板に密接に付着し、前十字靭帯の破断に伴って生じるランプ病変のメカニズムに関与するという説明もあります。

Hughston4)は、前十字靭帯(ACL)の断裂に伴う過剰な脛骨前方亜脱臼に反応した半膜様腱の収縮は、半月板が大腿骨と脛骨の間に捉えられている状態で後内側関節包を緊張状態にするため、半月関節包靭帯(Meniscocapsular ligament)および/または半月脛骨靭帯の断裂につながると考えた。

ACL断裂におけるランプ病変の頻度は著者によって異なり、Bollenは9.3%5)、Seilらは24%6)となっている。

近年、ランプ病変と後内側不安定性との関連性が指摘されています。Ahnら7)とPeltierら8)の生体力学的剖検研究では、ACLが断裂したときにランプ病変を形成すると、膝の前後面の不安定性が有意に増加することが示されている。同様に、ランプ病変や半月脛骨靭帯病変が生じると、内転・外転時の弛緩性が屈曲範囲全体に渡って有意に増加する。これらの著者らは、膝の安定性におけるランプ病変の役割と、ランプ病変の存在がACL(または再建後のグラフトにかかる応力)を有意に増大させ、再建後の再断裂率を高める可能性があることを主張している。

そういった知見をふまえて、ランプ病変の存在下では、ACL単独修復では正常な膝運動学は回復せず、弛緩は持続すると考えられるので、ACL再建に加えてランプ病変の修復を行うことで、不安定性を除去することができるという考え方があります。

半膜様筋の関節包/半月板への付着については明らかではないところもあるので、肉眼的・顕微鏡的分析を行った、というのが今回紹介する論文の主旨です。

▸研究デザイン

Descriptive laboratory study

▸方法

合計で14の新鮮な膝を解剖した。ドナーの死亡時の平均年齢は84歳(範囲は77~90歳)とかなり高齢。一応損傷などのある膝は除外されていますが。。

各ドナーから、大腿内側上顆、内側脛骨高原、内側半月板全体、十字靭帯、関節包、半膜様筋腱の遠位付着部の解剖学的標本を採取。収穫された標本を、単一のスライスで後方関節包と内側半月板後角に対する半膜様筋腱の遠位挿入を観察するために矢状面に沿って切断。これらのサンプルから組織学的スライドを作成し、顕微鏡下で分析。

▸結果

肉眼的検査では、すべての膝において半膜様筋腱の脛骨に付着する直接枝と、内側半月板後角の後方に走る腱状の関節包枝が明らかになった。この関節包枝は関節包の、下方の半月脛骨靭帯; meniscotibial ligament 、上方の半月関節包靭帯meniscocapsular ligamentに突出していたが、直接的には半月板組織に達していなかった。

半膜様筋腱の関節包枝の長さは14.3±4.4mm。脛骨側に付着するDirect tendonは脛骨高原の関節面下11±2.8mmに付着。

半膜様筋腱付着周囲の肉眼的観察。Cavaignac.AJSM, 20201) より図引用。日本語注釈はブログ著者作成。

半月脛骨靭帯;meniscotibial ligamentの挿入は内側半月板後方の後下縁にあり,半月関節包靭帯;meniscocapsular ligamentの挿入は内側半月板の後上縁にあった。

内側半月板後角、meniscotibial ligament, meniscocapsular ligament,半膜様筋腱の関節包枝で区切られた場所に、血行性の高い脂肪組織が認められた。

半膜様筋腱の関節包枝、関節包、半月脛骨靭帯を矢状面スライスと模式図。Cavaignac.AJSM, 20201) より引用。

今回の研究では、内側半月板後角に直接付着する半膜様筋腱の腱状線維がなかった。したがって、半膜様筋による内側半月板の牽引は、腱によって直接伝達されるのではなく、関節包組織と豊富に血管化された中間組織(脂肪組織)を介して伝達される。

半月板と関節包、半腱様筋腱との間に、しなやかで脆弱な中間組織が存在することで、ランプ病変の発生に関与する可能性がある。

膝関節を解剖学的に回復させるためには、ランプ病変の修復において半月脛骨靭帯と半月関節包靭帯との連続性を再確立することが必須である。というのがこの文献の主張になります。

私自身はランプ病変を修復したACL再建術後の患者を経験したことがありません。ちょっと疑問に思ったのですが、ランプ病変を修復した場合は、半膜様筋の収縮を入れるようなトレーニングを行う時期や強度を調整する必要があるのでしょうか。半膜様筋の収縮が関節包のほうへ伸びている枝を介して修復部にテンションをかけてしまうような気がしますがどうなんでしょうね。このあたりはopeしているドクターに聞いてみたいところです。

臨床においてACL損傷後の後方不安定に関しては、後外側不安定性は必ずチェックしていますが、後内側の不安定性についてはあまり意識していませんでした。振り返ってみると、ACL再建術後に脛骨全体がやや後方へ変位しやすい例があったような気がして、それはもしかするとランプ損傷によって後方への安定性が失われていたのかもしれないという気もします。MRIをみるときにもっと良く観察してみようと思いました。あと、エコーも評価に使えるかも?

参考文献

  1. Cavaignac E, Sylvie R, Teulières M, Fernandez A, Frosch KH, Gomez-Brouchet A, Sonnery-Cottet B. What Is the Relationship Between the Distal Semimembranosus Tendon and the Medial Meniscus? A Gross and Microscopic Analysis From the SANTI Study Group. Am J Sports Med. 2020 Dec 17:363546520980076. doi: 10.1177/0363546520980076. Epub ahead of print. PMID: 33332976.
  2. Hamberg P, Gillquist J, Lysholm J. Suture of new and old peripheral meniscus tears. J Bone Joint Surg Am. 1983;65(2):193-197.
  3. Strobel MJ. Menisci. In: Manual of Arthroscopic Surgery. Springer;1988:171-178.
  4. Hughston J. Knee Ligaments: Injury and Repair. Mosby–Year Book;1993.
  5. Bollen SR. Posteromedial meniscocapsular injury associated with rupture of the anterior cruciate ligament: a previously unrecognised association. J Bone Joint Surg Br. 2010;92(2):222-223.
  6. Seil R, Mouton C, Coquay J, et al. Ramp lesions associated with ACL injuries are more likely to be present in contact injuries and complete ACL tears. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2018;26(4):1080-1085.
  7. Ahn JH, Bae TS, Kang K-S, Kang SY, Lee SH. Longitudinal tear of themedial meniscus posterior horn in the anterior cruciate ligament–deficient knee significantly influences anterior stability. Am J Sports Med.2011;39(10):2187-2193.
  8. Peltier A, Lording T, Maubisson L, Ballis R, Neyret P, Lustig S. The role of the meniscotibial ligament in posteromedial rotational knee stability. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2015;23(10):2967-2973.

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