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子どもの身体運動の機会を増やしたい!複数の戦略を用いた介入により、学校における身体活動方針の実施と維持が促進されたクラスター無作為化対照試験の紹介

Childcare

子どもの日常的な運動量を増やすにはどうしたらよいか? 最近そんなことを考えています。

運動をする子としない子の二極化が進んでいるというのが全国体力調査で明らかになっていて運動しない子の運動量をいかに増やすかというのが課題。

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/07/18/1321174_05.pdf

日常的な運動習慣は、心の健康や集中力のアップ、運動器疾患の予防、将来的な健康のために重要。なので日常的な運動量を増やす必要がある。ではどう増やすか?

まず、子どもの運動に関わる直接的なステークホルダーを考えてみる。 親、兄弟、祖父母、学校の先生、友人、クラブ活動の指導者。 クラブ活動や友人と運動して遊ぶ子はもともと比較的運動量が多いと考えられる。 それ以外の子にとっては先生や親の運動することに対する理解や意識が重要。

先生の意識を変える、学校の生活に無理ない範囲で運動の時間を導入する、朝の会での三分ストレッチや軽い運動など。体育以外でちょっと動く時間を意識的に作る。学校の先生の負担にならないようにすることを優先したプログラム作り。

子どもの身体活動レベルを向上させるために、WHOは学校が子どもの日常的な運動を支援する方針を採用することを推奨している1)。学校生活の中で定期的な身体活動の機会を増やすような介入は、子どもの中等度の身体活動を効果的に増加させることができる2)

とはいえ、学校の先生はただでさえ忙しい。日々の業務に加えて身体運動のそこに理学療法士が入っていけないか?

体育がキライ、スポーツがキライ、走るのがキライ、という子でもカラダを動かすこと、それ自体は本質的に心地よいものであるはず。 恥や優劣、他人の目を排除した状況下で純粋にカラダを動かす、そのことだけを楽しむようなプログラムを作れないか。

また、親や学校の先生の健康に対して、運動という観点から理学療法士ができることがあるのではないか。子どもにとって直接的かつ重要なステークホルダーである親、先生の運動に関する意識向上、運動を通した心身の健康活力の向上が図れれば、子どもにも運動に関していい影響を与えることができる。

オーストラリアのニューサウスウェールズ州(NSW)のスポーツ・身体活動方針では、幼稚園から10年生までの生徒を対象に、週に150分間の中程度から一部強度の身体運動を予定するよう学校に求めている。小学校12校を対象として、教師の実施状況を改善するための9カ月間の戦略の効果を調べることを目的としたクラスター無作為化対照試験(RCT)が実施された3)。身体運動としての150分間には、体育(オーストラリアでは通常、一般的なクラス担任が教えている)、スポーツ、そして energisers;エナジャイザー(例:3~5分間の構造化された教室でのPA休憩)やアクティブ・レッスン(例:数学の授業にPAを取り入れる)などが含まれた。

ちなみにエナジャイザーってなに?って思って調べたらこんな感じのがWHOで紹介されてた。

実験の介入校には、学校幹部のサポート、学校内の代表例のトレーニング、継続的なサポート、ツールやリソースが提供された。介入直後、介入校の教員は、対照校の教員よりも有意に多くの分量の身体活動を週に予定していた(36.6分、95%CI 2.7~70.5、p=0.04)。)

このRCTから、身体運動量の増加のためにはそれ相応の学校と教員へのサポートが必要と考えられる。

先ほどのRCTの規模を大きくした介入研究で、複数の戦略を用いた介入により教室の教師が実施する構造化された身体活動の週当たりの分量が、12か月後と18か月後に効果的に増加するかどうかを評価した、オーストラリアのニューサウスウェールズ州にある61の小学校を対象としたクラスター無作為化対照試験報告がでている5)

12カ月間の複数戦略の介入には、技術支援、継続的なコンサルテーション、校長による変革の委任、スクールチャンピオンの特定と準備、実施計画の策定、教育的アウトリーチの訪問、教材の提供などが含まれた。対照校は、通常の支援(教育省のウェブサイトによる方針策定のためのガイドラインと電話によるサポート)を受けた。

ベースライン時、12カ月時、18カ月時に、教室の教師が実施した構造化された身体活動の週当たりの時間(これが主要アウトカム)を、教師による日誌の記入を通じて測定した。

結果はベースラインから12カ月後のフォローアップまでに、介入校の教師は対照校の教師よりも毎週の身体活動の実施時間が約44.2分(95%CI 32.8~55.7、p<0.001)増加した。18カ月後もその効果は持続していたが、その効果サイズは27.1分(95%CI 15.5~38.6、p≤0.001)と小さかった。

この研究により、複数の戦略を用いた小学校での身体活動量増加に有効であり、その改善は長期的なフォローアップでも一部維持されることがわかった。

特に介入により、エナジャイザーを使った休憩を提供する教師の意欲が効果的に高まったとされている。エナジャイザーは教師にとって許容できる、そしておそらく持続可能な身体運動の戦略であることが示唆された。

これは、エナジャイザーの特徴が短く、授業内や授業の合間に簡単に組み込むことができ、必要な機材が最小限またはゼロであることによると思われる。

しかし、そのシンプルさにもかかわらず、教師がエナジャイザーを実施するには何らかのサポートが必要であることが示唆されている。この研究では既存のオンライン・エナジャイザーを教師に利用してもらったとのこと。これによって教師のスキルアップのための継続的な集中支援の必要性が減り、より費用対効果の高い、拡張可能で持続可能な介入が可能になったという考察。

これ、エナジャイザーづくりに理学療法士が入って定期的なカウンセリングや実技指導をやれば、かなりいいんじゃないかと思いました。

NHK教育のおかあさんといっしょでやってる、ブンバ・ボーンとかあーいうのも一種のエナジャイザーですよね。

  1. World Health Organization. Global action plan for the prevention and control of noncommunicable diseases 2013-2020. Geneva, Switzerland, 2013.
  2. Okely AD, Salmon J, Vella SA. A systematic review to inform the Australian sedentary behaviour guidelines for children and young people. In: Report prepared for the Australian Government Department of Health, ed, 2012
  3. Riley N, Lubans DR, Holmes K, et al. Findings from the easy minds cluster randomized controlled trial: evaluation of a physical activity integration program for mathematics in primary schools. J Phys Act Health 2016;13:198–206.
  4. Mâsse LC, Naiman D, Naylor P- J. From policy to practice: implementation of physical activity and food policies in schools. Int J Behav Nutr Phys Act 2013;10:71.
  5. Nathan N, Hall A, McCarthy N, Sutherland R, Wiggers J, Bauman AE, Rissel C, Naylor PJ, Cradock A, Lane C, Hope K, Elton B, Shoesmith A, Oldmeadow C, Reeves P, Gillham K, Duggan B, Boyer J, Lecathelinais C, Wolfenden L. Multi-strategy intervention increases school implementation and maintenance of a mandatory physical activity policy: outcomes of a cluster randomised controlled trial. Br J Sports Med. 2021 May 26:bjsports-2020-103764.

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