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青少年期の心肺機能は将来の健康と関係する

Childcare

みなさんは学生時代の「体育」好きでしたか?私は座学よりは好きでしたが、そこまで大好きというわけではなく、成績は可もなく不可もなくというところでした。うまくできない競技(マット運動が苦手でした。。)や長距離走などのきつい種目だとやりたくなくなるんですよね。

子どもの運動に関して、運動をする時間が極端に少ない層と多い層が2極化する傾向があることが課題となっています。

中学生における保健体育の授業を除く 1週間の総運動時間は、60分未満の割合は男子6.5%、女子 19.4%となっていて、特に女子にて運動時間が少ない層が多い傾向があります(平成 29年度調査1))。女子中学生の5人に1人は1日8分以下の運動しかしていないというのは、なかなか驚きです。

これ読んでとても納得したのですが、「恥」の意識が運動嫌いの引き金になっていること多いように感じます。

そういった方にとっては、運動をゲーミフィケーションして一人でも継続しやすいものに取り組んだり、YouTubeの運動系のチャンネル見ながら家で運動したりすることは、人の目がないので恥をかくことなく、純粋に身体を動かす気持ちよさを感じられるので良いですよね。

身体動かすことは本来楽しいはずで、幼稚園あがる前くらいまでは誰でも思い切り走ったり跳んだり、自分のできる全力で身体を動かして笑っている子どもがほとんどだと思います。

小学校入るころから運動が得意な子と苦手な子がはっきりし始めて、周りとの優劣がわかってくる。うまく身体を動かせない子は体育の時に周りからからかわれたり、チームスポーツでは邪魔者扱いを受けたりして、動くことが嫌いになっていく。人の目を気にして「恥」の意識が強くなると余計に運動したくなくなってしまって、運動機能も落ちるので悪循環に入ってしまう。

これって実はけっこう大問題で、青少年期の運動機能や心肺機能が将来の健康にも影響することが最近の研究で分かってきています。

スウェーデンの徴兵登録から得られたデータを他の全国的な登録機関とリンクさせることにより、100万人以上の参加者を対象に、青年期(16歳頃)の男性の肥満、心肺体力、筋力と後の全原因および特定原因による障害年金との関連を検討した大規模な研究があります2-4)

その結果、青年期の低い心肺機能は単独で、あるいは低筋力や肥満と一緒に、すべての原因と特定の原因(精神医学的、筋骨格系、心血管疾患)に起因して、後に障害年金を受給する強い危険因子であることがわかりました。

さらに、それらの研究をもとにして、青年期の体力、特に心肺機能のレベルが高ければ予防できたかもしれない慢性障害の割合についての実際の推定をPopulation atributable fraction;PAF(人口寄与割合)を計算することによって求めた研究もされています5)

PAF(人口寄与割合)は、特定の曝露による潜在的な健康影響を表現するための一般的な方法であり、一定の仮定に基づいて、危険因子が減少または除去された場合には発生しなかったであろう症例の割合を推定する方法です。今回の場合は、青年期の心肺機能が向上した場合に将来的な慢性疾患がどの程度の割合で予防できるかという推定値として計算されています。

この研究では1972 年から 1994 年の間に徴兵された男性青年(16-19 歳)1079128 人のデータを利用し、徴兵時に自転車エルゴメーター試験で達成した最大ワット数(the maximal watts achieved in a maximal cycle ergometer test)として心肺機能を評価した。心肺体力レベルは、達成ワット数に応じて階級別に分類(第1階層≦211ワット、第2階層=212-229ワット、第3階層=230-241ワット、第4階層=242-254ワット、第5階層=255-270ワット、第6階層=271-284ワット、第7階層=285-300ワット、第8階層=301-320ワット、第9階層=321-343ワット、第10階層≧344ワット)。

対象者に対する約30年間の追跡調査で、54304 人が何らかの原因で障害年金を受給していた。

潜在的な交絡因子を調整した後の慢性障害のPAFを以下の2つのシナリオで計算

  1. 心肺機能の低い人(下位1~2階層)が、心肺機能のある程度高い状態(3~10級)になった場合
  2. すべての人(すでに体力の最高位にある人を除く)が、体力を1階層増加させた場合

すべての原因による障害年金受給に対するPAFは、心肺機能の低い人がすべて心肺機能がある程度高い状態になった場合(シナリオ1)には14.2%、すべての人が1階級分の体力を向上させた場合には10.2%と推定された。つまり心肺機能が低いレベルの人がある程度心肺機能を高めることで将来的な障害発生のリスクを14.2%低下させられるということになります。

障害発生における個々の原因については心血管系疾患に対する効果が最も大きく次いで筋骨格系となっていますが、多くの疾患において予防効果が期待できることが予測されました。

体力低下に関連した原因別の後遺障害に関するPopulation atributable fraction(人口寄与割合).参考文献5より引用、一部改変.

この結果を参考にすると、中高生の頃までに心肺機能を高めることが将来の健康維持のために重要であるといえます。心肺機能は運動や身体活動によって増加させることが可能なので、修正可能なリスク因子として考えてよさそうです。

体育の長距離走とかで走ることが嫌いになってしまう人も多いと思うのですが、個人差が大きいのに同じ距離走らされたりするのはナンセンスですよね。それぞれに適切な負荷をかけるために、ウェアラブルデバイスで脈拍を計測して目標心拍数決めてフィードバックするとかすれば、運動負荷としては個人にあった適切な強度に設定できるのでいいんじゃないでしょうか。

私も昨年から腕時計タイプの活動量計で脈拍や歩数のモニタリングしてますが、自分の身体の反応がわかってけっこうおもしろいです。私の場合、安静時脈拍が60回/分前後ですが、一日のうちで通勤時の歩いているときが一番脈拍が速くなり100~120回/分くらいまであがります(通勤時は速歩き15分くらい+電車)。仕事中は70~80回/分くらいといったところです。歩数は1万歩以上になりますね。もうちょっと脈拍が上がる運動をしないとなーという意識付けになります。自分の身体のリアクションがわかるって面白い。

学校でも体育以外の時間で、5分くらいでもその場でできる軽いステップやジョグ・ジャンプなどで心拍数あげる時間をとるだけでもちょっと変わるんじゃないでしょうか。少し運動したほうが授業への集中力も上がりますし。

後は、体育の時間が「楽しく動く」、「動いた後はすっきりして気持ちがいい」といったことを感じられるような時間になればいいですよね。「体育」であり「体楽」である。みたいな感じ。

将来の健康につなげることができる学校体育とは何か?というのは重要かつ多眼的な視点で考える必要のある大きなテーマです。引き続き考えていきたいです。

  1. 「平成29年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」報告書https://www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/02/13/1401299_2.pdf
  2. 1 Henriksson H, Henriksson P, Tynelius P, et al. Cardiorespiratory fitness, muscular strength, and obesity in adolescence and later chronic disability due to cardiovascular disease: a cohort study of 1 million men. Eur Heart J 2020;41:1503–10.
  3. Henriksson H, Henriksson P, Tynelius P, et al. Muscular weakness in adolescence is associated with disability 30 years later: a population- based cohort study of 1.2 million men. Br J Sports Med 2019;53:1221–30.
  4. Henriksson P, Henriksson H, Tynelius P, et al. Fitness and body mass index during adolescence and disability later in life: a cohort study. Ann Intern Med 2019;170:230–9.
  5. Henriksson P, Shiroma EJ, Henriksson H, Tynelius P, Berglind D, Löf M, Lee IM, Ortega FB. Fit for life? Low cardiorespiratory fitness in adolescence is associated with a higher burden of future disability. Br J Sports Med. 2021 Feb;55(3):128-129. doi: 10.1136/bjsports-2020-102605. Epub 2020 Aug 14. PMID: 32816793.

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