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神経損傷の分類と評価フロー

Study

先日、末梢神経損傷の診断についてまとめて発表する機会があったので、いろいろ文献調べてスライド作ってました。

発表で使用しなかったスライド(ボツスライド)がいくつかあって私のPC内に眠っているのももったいないので、それを使って神経損傷の分類と評価のフローについてまとめてみます。

末梢神経損傷の分類といえば、Seddon & Sunderland分類です。Sunderland分類のほうが神経線維の損傷状態を細かく分けています。

一般に神経周膜(Perineurium)が無傷のSunderland分類Ⅲが自然回復のボーダーラインで、神経周膜~神経上膜(Epineurium)の損傷があるⅣ~Ⅴの場合は自然回復は見込めないといわれています。

Seddon & Sunderland 分類
Campbell WW. Clin Neurophysiol. 2008. Marquez Neto OR. Acta neurochirurgica. 2017. Holzgrefe RE. The Journal of hand surgery. 2019. を参考に表作成

外傷性神経障害は、脱髄性伝導ブロックまたは軸索損傷が存在することが多いといわれています。検査・診断で見ていくポイントとしては、

脱髄性伝導ブロック か 軸索損傷をどうやって見分けるか、ということと

軸索損傷がある場合に、自然回復のあり/なしをどうやって見分けるかというところです。

外傷性の神経損傷が疑われる場合、回復しない神経損傷をできるかぎり早期に見極めることが大事なことですが、それがなかなか難しいんですよね。

神経外傷患者の診断と意思決定のプロセスを示すフローチャートの一例を使って、検査の概要を説明します。

神経外傷患者の診断と意思決定のプロセスを示すフローチャート
Simon NG. Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry. 2016. より作成

まず臨床評価を行い、神経障害の範囲や部位にあたりをつけて、必要であれば神経伝導検査や筋電図検査といった電気診断検査を行います。

症状が重度であったり、骨折などの組織の損傷がある場合は早期にエコーやMRIといった検査をおこないます。

神経に連続性がない場合や、骨などによる神経損傷がある場合は、早期に手術となります。

神経の連続性がある場合は、臨床評価と筋電図評価を続けて経過を見るのですが、拡散テンソル画像という神経の状態を評価できる比較的新しいMRIの手法があるので、必要に応じてそれを適用ことも検討されます。

各検査の利点と限界をまとめると以下のような感じ。

電気診断検査(神経伝導検査、針筋電図)

  • 神経の脱髄性伝導障害と軸索損傷の有無を判定できる
  • 軸索損傷が自然回復するかは経過を追う必要がある

画像検査

エコー

MRI(T1 T2など)

  • 神経切断が特定できる
  • 損傷部位と原因がわかる
  • 標準化された指標がない

MRI(拡散テンソル画像)

  • 脱髄と軸索損傷を見分ける可能性がある
  • 神経線維の可視化が可能
  • 神経回復の予測にも使えるかも
  • 末梢神経損傷領域の研究まだ少ない

遭遇することのあるシチュエーションでどのように検査をすすめるかについて、肩関節脱臼後に腋窩神経損傷を合併した場合の評価フローを紹介します。回復しない重度の腋窩神経損傷を見逃さず専門医に紹介することが重要です。

ちなみに肩関節脱臼に伴う重度の腋窩神経麻痺と関連する因子にはつぎのような項目があります。

  1. 上腕骨近位骨折 or 肩甲骨骨折
  2. 血管損傷
  3. 2時間以上の整復の遅れ
  4. 腋窩神経とその他の神経叢による神経学的な欠損所見
  5. 腋窩神経に関連する神経障害性疼痛
外傷トピック 肩関節脱臼後の腋窩神経損傷の評価フロー
Avis D. EFORT open reviews. 2018.

腕神経叢レベルでの損傷が疑われる場合は、早期に専門医への紹介が必要です。

腋窩神経損傷のみであった場合は、注意深く経過をおい12週時点で症状が残存する場合は筋電図評価を行い、筋の脱神経変化が強い場合は専門医へ。

再支配が認められたとしても半年程度たっても症状が改善しない場合も同様に専門医への紹介が必要ということが推奨されています。

経過をおうことでしか自然回復の有無を判定できないというのがもどかしいところではあります。

参考文献

  1. Campbell WW. Evaluation and management of peripheral nerve injury. Clin Neurophysiol. 2008;119(9):1951-1965. doi:10.1016/j.clinph.2008.03.018
  2. Marquez Neto OR, Leite MS, Freitas T, Mendelovitz P, Villela EA, Kessler IM. The role of magnetic resonance imaging in the evaluation of peripheral nerves following traumatic lesion: where do we stand?. Acta Neurochir (Wien). 2017;159(2):281-290. doi:10.1007/s00701-016-3055-2
  3. Holzgrefe RE, Wagner ER, Singer AD, Daly CA. Imaging of the Peripheral Nerve: Concepts and Future Direction of Magnetic Resonance Neurography and Ultrasound. J Hand Surg Am. 2019;44(12):1066-1079. doi:10.1016/j.jhsa.2019.06.021
  4. Simon NG, Spinner RJ, Kline DG, Kliot M. Advances in the neurological and neurosurgical management of peripheral nerve trauma. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2016;87(2):198-208. doi:10.1136/jnnp-2014-310175
  5. Avis D, Power D. Axillary nerve injury associated with glenohumeral dislocation: A review and algorithm for management. EFORT Open Rev. 2018;3(3):70-77. Published 2018 Mar 26. doi:10.1302/2058-5241.3.170003

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