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肩腱板大断裂で偽性麻痺を生じる症例の特徴とは?

整形外科/スポーツ関連

肩関節腱板断裂のうち広範囲断裂の症例で、偽性麻痺(Pseudoparalysis)が生じるケースと生じないケースがあります。肩関節の偽性麻痺とは、神経麻痺や拘縮、疼痛などの影響がないのにもかかわらず、自分の力で手を挙げた際に90°以上挙げられない状態です。偽性麻痺があるorなしの違いがどこにあるのか気になっていたのですが、腱板断裂の程度と脂肪浸潤、肩甲骨の形態と偽性麻痺の関連についての論文を見つけたのでまとめてみました。

▸目的
肩甲骨の形態学的特徴と腱板断裂の程度が偽性麻痺と関連する独立した因子であるかどうかを明らかにすること

▸研究デザイン
ケースコントロール研究;エビデンスレベル3

▸方法
対象者はmassive Rotator Cuff tear; mRCT(2腱以上の完全断裂)で、activeな肩甲骨面の上肢挙上が90度未満の患者(偽性麻痺群)50人と、mRCTでactiveな肩甲骨面の上肢挙上が90度以上の患者(偽性麻痺なし群)50人。両群は比較のために年齢および性別をマッチさせた。

X線写真の解析は、critical shoulder angle(CSA)とacromiohumeral distance(ACHD)の測定、posterior acromial tilt、anterior and posterior acromial coverage、肩峰後高さを算出した。

MRIによる測定は、筋の脂肪浸潤、前方(肩甲骨下筋)および後方(棘下筋/小円筋)の断裂範囲、全範囲の断裂範囲(前方+後方の断裂)を算出した。

▸結果
対象者のの人口統計学的特徴に有意差はなし。

activeな肩甲骨面の上腕骨挙上角度は、偽性麻痺群51°±22° vs 偽性麻痺なし群135°±29°と有意な差あり。

多変量解析では、偽性麻痺群と偽性麻痺なし群との間に独立した要因が明らかになった。(偽性麻痺群 vs 偽性麻痺なし群)

  • CSA(38.2°±4.6° vs 35.2°±3.7°;P = .001)
  • ACHD(4.7±2.2mm vs 7.3±2.6mm;P < .001)
  • 肩峰後高(22±10mm vs 17±7mm;P = .005)
  • 前方(-9°±21° vs 25°±12°; P < 0.001)と後方(-18°±14° vs 2°±14°; P < 0.001)の断裂範囲
  • 偽性麻痺なし群は偽性麻痺群と比較して、肩甲下筋の脂肪浸潤が有意に少なかった

図でまとめると次のような感じ。

Ernstbrunner L 1)より引用 一部改変

まとめると、断裂範囲が前後に大きく、肩甲下筋の脂肪浸潤があり(特に下半分に及ぶもの)、上腕骨骨頭が上昇して肩峰下スペースが狭く、critical shoulder angleが大きい(肩峰が外側に長くなっている)ことが、腱板大断裂者における偽性麻痺がある症例の特徴となっているということです。

偽性麻痺がある時点で、リハビリテーションのみで改善は難しいので手術適応となりますが、こういった知識も持っていると症状と画像をみるときに参考になりますね。個人的には肩甲下筋の状態が影響あるというのが興味深かったです。

参考文献
1. Ernstbrunner L, El Nashar R, Bouaicha S, Wieser K, Gerber C. Scapular Morphologic Characteristics and Rotator Cuff Tear Pattern Are Independently Associated With Chronic Pseudoparalyis: A Matched-Pair Analysis of Patients With Massive Rotator Cuff Tears. Am J Sports Med. 2020;48(9):2137-2143. doi:10.1177/0363546520929353

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