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「よく笑う」ことが介護予防になる!?

フレイル

コロナの影響で声を出して大笑いするのはなんとなく気が引けてしまう今日この頃ですが、みなさんは毎日声出して笑ってますか?

数日前に朝のNHKのニュースを見ていたら「笑わない高齢者は、毎日笑う高齢者に比べて、介護が必要になるリスクが1.4倍になる」というのを目にしました。「笑いは百薬の長」なんて言葉もありますが、実際のところ笑うことの効果ってどうなんでしょうか?

フレイル予防にも使えそうなネタなのと、笑う頻度以外の共変量についてどんな感じだったのか気になったので元になっている論文を読んでみました。

▸研究デザイン
prospective cohort study

▸方法
対象は日本老年学的評価調査(Japan Gerontological Evaluation Study ; JAGES) に参加し、日常生活動作が自立している65歳以上の14,233人(男性50.3%)。JAGESについて私は知らなかったのですが、大規模な疫学調査などを行っているんですね。一万人以上の規模のコホート研究すごい。
そのデータから3年間の追跡調査のデータを分析。
対象者を「声を出して笑う頻度」により4つのカテゴリー(「ほぼ毎日」、「週に1~5日」、「月に1~3日」、「ない、または、ほとんどない」)に分類した。ちなみに笑う頻度の分類については”How often do you laugh out loud?”(声を出して笑うことはどのくらいの頻度でありますか?)という質問に対する自己回答してもらっています。
交絡因子になりえる、性別、年齢、高血圧、糖尿病、喫煙習慣、アルコール摂取量、家族構成、社会参加、抑うつ症状、認知機能、日常生活動作(IADL)、教育到達度、および等価所得に関する情報についても自己記入式質問紙から情報を得た。
統計解析は、Cox比例ハザードモデルを用いて、笑う頻度の各カテゴリーにおける新規の要介護2~5の発生リスクと死亡リスクを推定した。

▸結果

ベースラインでの対象者の笑う頻度カテゴリー別に、下の表のような特徴がありました。

○笑いの頻度の増加とともに増加する因子 ●笑いの頻度の増加とともに減少する因子
女性である 糖尿病と診断されたことがある
社会的に活発である 認知機能が低下している
教育年数が10年以上である IADLは依存している
  抑うつ状態にある

その他、年齢、喫煙習慣、アルコール摂取量、家族構成、等価所得のカテゴリーでは、笑いの頻度のカテゴリー間で有意差が認められた。

いくつか個人的に気になる因子をグラフ化してみました。「ほとんど笑わない」カテゴリーで男性、ひとり暮らし、社会参加少ない、抑鬱傾向の割合が多いのがなんとなく想像どおりというか、イメージがつく感じがしますね。私もいずれは笑わない高齢者になりそうです。。

Tamada.2020 1) table1より抜粋して作図

追跡期間(中央値3.3年)中、605人(4.3%)が新規の要介護2以上の認定を受けた。また、659人(4.6%)が死亡した。

潜在的交絡因子(性別、年齢、高血圧、糖尿病、喫煙習慣、アルコール摂取量、家族構成、社会参加、抑うつ症状、認知機能、日常生活動作(IADL)、教育到達度、等価所得)を調整した、要介護2以上新規発生の多変量補正ハザード比は、「ほとんど毎日笑う」人に比べて、「笑わない、またはほとんど笑わない」人の方が1.42倍(95% CI, 1.10-1.85)高かった。全死因死亡のリスクとの関連は観察されなかった(p=0.39)。

新規の要介護状態発生についての調整済みハザード比を、笑う頻度のカテゴリー別に図にすると下図のようになります。

Tamada.2020 1) table2より抜粋して作図
笑う頻度各カテゴリーごとの、交絡因子(性別、年齢、高血圧、糖尿病、喫煙習慣、アルコール摂取量、家族構成、社会参加、抑うつ症状、認知機能、日常生活動作(IADL)、教育到達度、等価所得)で補正した、調整ハザード比

結論としては笑う頻度の減少(ほとんど笑わなくなること)は要介護状態の発生についての独立した予測因子になるということになります。

高齢者の要介護状態になってしまう要因は非常に多岐にわたるので、こういった解析上の交絡因子多いですよね。今回は交絡因子を調整したうえでも「笑わない」ということが予測因子となったという結論ですが、実際の介入としては笑う頻度を上げるということにフォーカスするよりも、社会活動への参加や人との交流、会話を増やすことや、身体運動を増やすことを広い視点で考えたほうが良いと思います。食事と栄養素の関係と一緒で、特定の栄養素だけを補強して摂取するよりも、食事全体の内容を考えたほうが健康にいいということがあるのではないかと。

まったく笑わなくなっていたら危険な兆候、くらいの認識が良いかなと思います。

  1. Tamada Y, Takeuchi K, Yamaguchi C, et al. Does laughter predict onset of functional disability and mortality among older Japanese adults? the JAGES prospective cohort study [published online ahead of print, 2020 May 16]. J Epidemiol. 2020;10.2188/jea.JE20200051. doi:10.2188/jea.JE20200051

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