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足関節内反捻挫の診断、治療、予防のガイドライン2018まとめ

Study

今回は、British Jornal of Sports Medicineから2018年に出された、足関節内反捻挫(Lateral ankle sprain; LAS)の診断、治療、予防についてのガイドライン1)をまとめます。

ModalityRecommendationLevel of evidence
Predisposing factors
素因
足関節内反捻挫の治療においては、修正可能な危険因子を同定し、可能であれば対処すべきである。2–3
Prognostic factors
予後予測因子
リハビリテーションの過程での予後予測因子を評価し、修正可能なネガティブな因子に対処する。3
Diagnostics
診断
靭帯損傷の重症度を決定するためには、後期の身体評価が必要。2
RICE治療法としてRICEは推奨されない。2
NSAIDs 痛みや腫れを抑えるためにNSAIDsを使用することがある。2
Immobilisation
不動化
不動化(過度の固定)は足関節内反捻挫の治療に使用すべきではない。2
Functional support
機能的なサポート 
不動よりも機能的なサポートが好ましく、特に装具の使用が好ましい。2
 Functional support (予防)予防のために、テーピングと装具の両方を使用してもよい。方法の選択は常に患者の希望に基づいて行うべきである。1
Exercise
エクササイズ
運動療法は、関節の機能を回復させるために、できるだけ早く開始する必要がある。1
Exercise(予防)反復性の足捻挫については、できるだけ定期的なトレーニングにエクササイズを取り入れるべき。1
Manual mobilisation
徒手モビライゼーション
徒手モビライゼーションは、治療効果を高めるために他の治療法との併用が推奨される。3
Surgery
手術
手術は、プロスポーツ選手のように早期回復が求められる場合や、保存的な治療では解決できない問題を抱えている場合にのみ勧める。
保存的治療で回復する患者への不必要な侵襲的治療を避ける
1
Other therapies
その他の治療
現在のエビデンスに基づくと、上記以外のその他の治療は推奨されない。2
Interprofessional communication
専門家間の情報共有
コミュニケーションチェックリストを活用して、コミュニケーションのミスを防ぐ必要がある。1
Footwear
靴に関しては、エビデンスの結論が出ていない。1
Work resumption
仕事再開
欠勤を最小限に抑えるために、早急な機能的治療と復職を勧める。3
Sport resumption
スポーツ再開
プロプリオセプション、筋力、コーディネーション、機能に焦点を当てた指導付きのエクササイズを行う。1
介入ごとの推奨レベル一覧 
Vuuberg G, et al. BJSM 20181)より引用 ブログ著者訳

Predisposing factors危険因子

推奨① 内因性の危険因子について
急性足関節内反捻挫の患者を治療する際には、プロプリオセプションやROMの欠損などの修正可能な危険因子を特定し、可能であれば、再発のリスクを軽減するための予防および/またはリハビリテーションプログラムに含めるべきである(レベル3)。

  • 足関節背屈制限、固有受容覚の低下、姿勢コントロール・バランスの不良
  • 筋力の低下、協調性低下、心肺機能、足関節全可動域の低下
  • 女性(RR 1.25, 95% CI1.17 to 1.34)
  • 足関節捻挫の既往(RR 1.44, 95% CI 0.96 to 2.16)

推奨② 外因性の危険因子について
外因性の危険因子は、LASのリスクを有意に増加させる可能性がある。 LASを受傷した患者の治療に携わる医療専門家は、特に練習しているスポーツの種類だけでなく、他の外因性危険因子にも注意を払うべきである(レベル2)。

  • 受傷の多いスポーツ(aeroball, basketball, indoor volleyball, field sports, climbing)
  • サッカーでは天然芝のほうが人工芝よりも危険が少ない (RR 0.53, 95% CI 0.48 to 0.59)
  • ディフェンダーのほうが受傷が多い

Prognostic factors予後予測因子

推奨:急性LASの後は、患者の現在の痛みのレベル、仕事量(work load)、スポーツへの参加レベルに十分な注意を払うべきである。これらはすべて回復に悪影響を及ぼし、将来の傷害再発のリスクを高める可能性がある。したがって、治療過程の早期に対処すべきである(レベル3)。

  • 1~4年の追跡調査では、5~46%の患者がまだ痛みあり、3~34%の患者が捻挫の再発を経験、33~55%の患者が不安定性ある
  • 前方インピンジメントの臨床的徴候 25%
  • LASを受傷した人の最大40%が慢性足関節不安定症を発症
  • 予後因子のいくつかは神経筋に由来するため、理学療法はLAS後の身体障害を改善し、慢性足関節不安定症への進行を予防するのに役立つかもしれない。

Diagnostics診断

推奨:前距腓靭帯損傷の臨床評価については、受傷後4~5日の間に行う前方引き出しテストは感度(84%)、特異度(96%)と良好になる。骨折が疑われる場合は、Ottawa ankle rulesを適用すべきである(レベル2)。

Rest Ice Compression Elevation (RICE)

推奨:RICE単独、クライオセラピー単独、圧迫単独では、痛み、腫れ、機能に良い影響を与えるというエビデンスはない。したがって、急性LASの治療においてRICE単独の役割はない(レベル2)。

  • 急性LASに関連した症状を軽減するためのクライオセラピーの有効性は不明である(33件のランダム化比較試験、n=2337)
  • クライオセラピーとエクササイズの両方を行うと効果的との報告あり
  • 圧迫と挙上についても効果があるという明確なエビデンスはない

Non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs)

推奨:NSAIDsは、急性LASを発症した患者が、痛みや腫れを軽減することを第一の目的として使用することができる。 しかし、NSAIDの使用は合併症と関連しており、自然治癒のプロセスを抑制したり、遅らせたりする可能性があるため、注意が必要である(レベル2)。

  • NSAIDsによって抑制された炎症は組織の回復に必要な要素であるため、NSAIDsの使用は自然治癒のプロセスを遅らせる可能性がある

Immobilisation不動化(ギプス固定など)

推奨:機能的なサポートと運動療法の使用は、不動化に比べてより良い結果を得ることができるので好ましい。痛みや浮腫の治療のために固定を行う場合は、最大で10日にすべきで、固定後に機能的な治療を開始するべきである(レベル2)。

Functional support機能的なサポート(テーピングやサポーターなど)

推奨:不動化よりも4~6週間の機能的サポートの使用が望ましい。足関節装具の使用は、他のタイプの機能的サポートと比較して最大の効果を示す(レベル2)。

  • 実際の状態に合わせた足関節のサポートは効果的
  • 弾性包帯の使用よりもレースアップ装具またはsemi-rigid装具の使用が好ましい
  • キネシオテープは不安定な足首に十分な機械的なサポートができる可能性が低い

Exercise エクササイズ

推奨:関節機能の回復を最適化するためには、LAS後に運動療法を開始すべきである。指導付きの運動療法をおこなうべきかどうかは、矛盾するエビデンスのため不明であり、さらなる研究が必要である(レベル1)。

  • エクササイズは、再発率を減少させる(RR 0.62、95%CI 0.51~0.76)
  • 足首の機能的な不安定性の有病率を減少させる(RR 0.80、95%CI 0.64~1.00)
  • 指導付きのエクササイズについては、重度の捻挫において可動域改善に効果的という報告や、筋力や固有受容覚の改善、早期復帰に有効という報告があるが、効果がないという報告もあり結論がだせない

Manual mobilisation 徒手モビライゼーション

推奨:徒手的関節モビライゼーションは、運動療法などの他の治療法との併用により効果を高めることができる(レベル3)。

  • 急性LAS後の足関節背屈ROMを短期的に増加させる
  • 痛みを減少させる
  • 運動療法と併用した手技療法は、運動療法のみの場合と比較して良好な転帰

Surgery 手術

推奨:慢性的な外傷と急性の外側靭帯完全断裂後の手術の臨床成績は良好だが、すべての患者が外科的治療を必要とするわけではないため、機能的治療が好ましい方法である。これは不必要に侵襲的な(過剰な)治療を受けたり、合併症(レベル1)のリスクを回避するのにも役立つ。しかし、治療の決定は個人単位で行う必要がある。プロのアスリートでは、より早くプレーに復帰するために外科的治療が好まれることがある。

Other therapies その他の治療

推奨:鍼灸治療、振動治療、バイオプトロン光治療などの治療法の有効性には強力な証拠が存在しないため、急性LASの治療には推奨されない(レベル2)。

Interprofessional communication専門家間の情報共有

推奨:LAS患者の治療に携わる医療従事者間のコミュニケーションを向上させるために、コミュニケーションチェックリストの使用が推奨される。

Footwear 靴

推奨:現時点ではエビデンスの結論が出ていないため、靴についての推奨はできない(レベル1)。

Work resumption 仕事再開

推奨:復職を早めるためには、足関節ブレースと即効性のある機能療法を併用することを推奨する(レベル3)。

Sport resumptionスポーツ再開

推奨:プロプリオセプション、筋力、協調性、機能などのエクササイズに焦点を当てた指導下のエクササイズは、LAS後の患者のスポーツへの復帰を早めることにつながるため、推奨される(レベル1)。

Functional supportによる再発予防効果

推奨:メカニズムに不明な点があるが、テーピングとブレースの両方が足関節捻挫の再発予防に有効である(レベル1)。使用法の選択は個人の好みによるべきである。

  • ブレースまたはテーピングの使用は、特にスポーツに参加している人において、再発(RR 0.30、95%CI 0.21~0.43)および初回LAS(RR 0.69、95%CI 0.49~0.96)の両方のリスクを低下させる
  • キネシオテープは姿勢制御に効果があるため、LAS既往のある選手にとって予防効果がある可能性がある
  • 装具やテープの使用は個人の選択であり、実用的な使用性とコストに基づいて決める

Exercise therapyによる再発予防効果

推奨:特にアスリートの場合は、LASの再発を防ぐために、捻挫後できるだけ早く運動療法を開始することが推奨される。運動療法は、可能な限り家庭での運動と同様に、定常的なトレーニング活動に組み入れるべきである(レベル1)。初回のLASに対する運動療法の予防効果はエビデンスに乏しい。

  • LASの再発防止には、コーディネーションやバランストレーニングが有効である
  • 運動療法は通常のケアと比較して再発の予防効果がある(RR 0.62、95%CI 0.51~0.76)
  • この効果は、アスリートではさらに大きい(RR 0.38、95%CI 0.23~0.62)
  • 捻挫を再発したアスリートに、関節の位置感覚を改善するためのプロプリオセプテ ィブトレーニングを行わせると、LASの再発リスクは健常対照者と同程度まで低下する
  • 運動療法は初回のLAS受傷に対しては予防効果がない
予防策対象研究数患者数(S)MD/RR(95%CI)result in faver of
Immobilisation versus
functional support
Recurrent sprains11 RCTs844RR 1.17 (0.86 to 1.59)None
Functional supportRecurrent sprains6 RCTs2307RR 0.30 (0.21 to 0.43)Functional support
First-time sprains4 RCTs2933RR 0.69 (0.49 to 0.96)Functional support
Sprains in mixed injured
–non-injured groups
6 RCTs6108RR 0.39 (0.25 to 0.95)Functional support
Muscle activity1 RCT60MD 1.13 (−1.48 to 3.75)None
Stability1 RCT62MD −0.44 (– 0.70 to −0.18)Functional support
Exercise therapyRecurrent sprains10 RCTs1284RR 0.62 (0.51 to 0.76)Exercise
First-time sprains1 RCT173RR 0.45 (0.15 to 1.37)None
Sprains in mixed injured–non-injured groups13 RCTs8021RR 0.60 (0.51 to 0.70)Exercise
SurgeryRecurrent sprains12 RCTs1437RR 0.72 (0.55 to 0.94)Surgery
予防介入の効果一覧 
Vuuberg G, et al. BJSM 20181)より引用 

参考文献

  1. Vuurberg G, Hoorntje A, Wink LM, van der Doelen BFW, van den Bekerom MP, Dekker R, van Dijk CN, Krips R, Loogman MCM, Ridderikhof ML, Smithuis FF, Stufkens SAS, Verhagen EALM, de Bie RA, Kerkhoffs GMMJ. Diagnosis, treatment and prevention of ankle sprains: update of an evidence-based clinical guideline. Br J Sports Med. 2018 Aug;52(15):956. doi: 10.1136/bjsports-2017-098106. Epub 2018 Mar 7. PMID: 29514819.

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