スポンサーリンク

投手の疲労がある状態での連投を避ける判断は間違いじゃない

大船渡高校の最速163キロ右腕、佐々木朗希投手が決勝戦で出場せずに敗退したことが話題になっています。

大船渡・佐々木の夏終わる、決勝登板せず/詳細 - 高校野球 : 日刊スポーツ
最速163キロ右腕、大船渡・佐々木朗希投手(3年)が甲子園を目指し花巻東と決勝戦。2-12で大敗し甲子園出場はならなかった。佐々木は先発メンバーから外れ最後ま… - 日刊スポーツ新聞社のニュースサイト、ニッカンスポーツ・コム(nikkansports.com)

監督の判断に対していろいろと憶測も含めて意見が出ていますが、試合日程と登板状況をみてみると疲労がある状態での連投を避けたのでは?という気もします。

当ブログでも過去の記事で青少年期の野球選手における肩と肘のケガのリスクファクターについてのシステマティックレビュー1)を紹介しました。

その中で肩や肘のケガにつながるリスクファクターとしては、身長が高い、球速が速いといった身体能力の面と、腕の疲労がある状態での投球といった疲労の影響について述べられています。佐々木投手のように高身長で球速の速い投手はケガのリスクが高いと考えられます。

連投による影響については過去の研究であまり検討されていないのですが、もしかすると連投が当たり前なのは日本の高校野球くらいなのかもしれません。今回は球数が多い試合もあったため、疲労はあったと推測されます。

疲労がある状況での連投というのは、ケガのリスクが高いと判断するのは合理的と思います。

また、投球後の筋疲労により筋力低下が起きるという報告2) があります。大船渡高校の監督は医師、理学療法士、トレーナーからのアドバイスも聞きつつ投球の可否について判断しているようです。専門職が入っているのであれば、おそらく本人の自覚的な疲労感や調子だけではなく、筋力のチェック等の客観的な評価もしたうえで身体の状態をみていると思います。

仮に疲労による筋力低下が肩や肘周囲にあるならば、本人の筋力による関節の安定化作用が十分ではなくなり、靭帯や関節自体に負荷をかけてしまう可能性が高まります。例えるなら、ブレーキの不調がありうるF1のマシンを走らせるようなものです。

靭帯の損傷は一球でも生じる可能性があります。その場合、今後の野球キャリアに与える影響ははかり知れないでしょう。

すべては結果論であり、もし投げていたらどうだったかといったことはわかりませんが、様々な議論をするのは今後の高校野球のあり方、試合日程を再考する上で重要と思います。日本高野連にはデータやエビデンスに基づき、アスリートファーストの方針を示してもらいたいです。

私個人としては、選手の身体や未来を思いやり、リスクを回避する決断をした大船渡の監督は英断であったと考えます。

参考文献
1) Norton R, Honstad C, Joshi R, Silvis M, Chinchilli V, Dhawan A. Risk Factors for Elbow and Shoulder Injuries in Adolescent Baseball Players: A Systematic Review. The American journal of sports medicine. 2018 Apr 1:363546518760573. Epub 2018/04/10.
2) Mullaney MJ, McHugh MP, Donofrio TM, Nicholas SJ. Upper and lower extremity muscle fatigue after a baseball pitching performance. The American journal of sports medicine. 2005 Jan;33(1):108-13.

コメント

タイトルとURLをコピーしました