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遠隔リハビリテーション(テレリハビリテーション)の可能性を考える

本の感想や雑感など

緊急事態宣言からもうすぐ一ヵ月ですね。

4月に入ってから、理学療法士などのリハビリ関連職種の感染や、リハビリテーション病院などがクラスターになったケースも出てきました。もともとリハビリ関連職種は、患者と一対一で20分~60分程度の近距離での接触や会話を伴う介入、病棟をまたいでの移動や、いろんな病棟の患者をリハビリ室集めてのリハビリ実施、外来リハビリや訪問・通所リハビリとの兼任など、自身がウイルスのスプレッダーとなるリスクが高い職種のひとつです。私の知る範囲では、各病院での対策として、外来や訪問リハと院内の患者のリハビリ担当を兼任しない、リハビリ室を使用しない、病棟間を移動してリハビリを実施しないなどの対策を行っているようです。

私の勤務するクリニックでも職員の不安が大きい点として、自身が感染することよりも、患者を感染させてしまうのではないかという意見が聞かれました。

患者-セラピスト双方の感染リスクを下げる方法のひとつとして、遠隔リハビリテーション(Tele-Rehabilitation; テレリハビリテーション)の活用が考えられます。今回の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて医師によるオンライン診療は急激に広がりました。しかし現在のところ日本では、オンラインでのリハビリテーション、遠隔リハビリテーションといったことは保険診療において認められていません。

海外においては研究報告も出ているのでどういった領域において遠隔リハビリ(テレリハビリ)が行われているかを調べてみました。

今回参考にしたのがこちらの文献。

1996年~2016年の期間の遠隔リハビリ(Telerehabilitation)に関する文献をレビューした文献です。27文献が採用されqualitatibe synthesisされています。

大きく分けると下記の3つの分野において遠隔リハビリが行われているようです。

  1. 心臓リハビリテーション
  2. 神経系リハビリテーション
  3. 整形外科疾患のリハビリテーション(理学療法)

心臓リハビリテーションにおける遠隔リハビリ(Cardiac Telerehabilitation)

安定した心不全患者に対して、家庭での遠隔モニタリングによる心臓リハビリテーション(home-based telemonitored cardiac rehabilitation; HTCR)の報告があります。携帯型心電図でのモニタリングをして在宅でのエクササイズを行うことは通常の外来通院心リハと同等の効果があると報告されています。

タッチスクリーンとバイタルサインをモニタリングするセンサーを組み込んだエアロバイクを使用した遠隔でのリアルタイム運動処方の試みなども行われているようです。

心電図やSPO2などが適切にモニタリングできる環境が整えられれば、心臓リハや呼吸リハといった循環器系の運動処方は、遠隔リハでできる可能性を感じます。Apple watchの心電図機能などウェアラブルデバイスのモニタリング機能が、日本でも認可され活用できるようになれば遠隔リハビリの対象者を増やせられそうですよね。

神経系リハビリテーションにおける遠隔リハビリ(Neurological Telerehabilitation)

脳卒中後などの神経系リハビリテーションでは、バーチャルリアリティの利用やロボットアームやロボットレッグを使用した在宅でのリハビリテーションが行われています。

タブレットコンピュータと無線で接続されたインソール、医療専門家のためのグラフィックウェブインターフェイスで構成されたRehab@Home frameworkも行われ良好な結果が得られている。

多発性硬化症、脳卒中、外傷性脳損傷の上肢のリハビリテーションを在宅で実行するためのH-CADと呼ばれるテレリハビリテーションプロジェクトが2003年から2005年まで行われました。患者と医療者は遠隔会議システムでコンタクトをとることができる環境。これも良好な結果。

また、身体的なリハビリテーションだけではなく、うつの治療にも遠隔リハビリを行った研究もなされているとのことです。

神経系リハビリ分野は、患者自身が一人では運動麻痺や高次脳機能障害などの影響で適切に動くことができない状況も多いので、ロボットでのアシスト、運動のモニタリングシステム、バーチャルリアリティなどを組み合わせたシステムによる遠隔リハビリが多いようです。高度化されたシステムになってくると導入までのコストや使用する方法の煩雑さなどにより、実際に使用するハードルが高くなってしまいます。なかなか気軽にできる感じではないですね。

整形外科疾患における遠隔リハビリ(Physiotherapy Applied to Telerehabilitation)

整形外科疾患に対する遠隔での評価法の信頼性や妥当性の検討がなされています。それによると、腰椎のアライメントなどの一部を除き概ね有効な評価ができるという結果でした。

評価が正確に行われなければ、治療が行えませんからこの検討は重要ですね。

その他にMicrosoft Kinectを使用した動作評価やエクササイズ指導の試みも行われているようです。

今回の論文ではあまり整形外科疾患に関してのまとめは多くありませんでした。人工膝関節全置換術などでは積極的に遠隔リハが行われているはずですが。私は現在、おもに整形系外科分野に携わっていますので、この分野に関しての論文はあらためて探して読んでみようと思います。

まとめ

遠隔リハビリテーションについてまとめると下記のようになります。

利点

  • 遠隔地にいる場合や、身体状態によって通院できない状態の患者に対してリハビリテーションを提供できる
  • システムさえ作れば費用対効果が高い可能性がある
  • 感染症のリスクが高い現状にフィットする(3密を避けてリハビリ提供できる)

欠点

  • 導入コストが高い場合がある
  • 身体接触を伴う評価や治療は実施できない
  • Face to Faceの状況よりはインタラクティブな感じが少ない

課題

  • 身体状態の評価方法の検討が必要
  • 提供するシステムづくり
  • 日本における保険診療の適応はまだない

個人的には、遠隔でリハビリを行う場合、いかに患者-セラピスト間をいかに双方向、インタラクティブな状態にするかが重要な点だと思っています。

遠隔リハビリテーション、テレリハビリテーションについては今後発展の可能性を感じます。日本の医療制度上なかなか導入が難しいこともありますが、世の中のニーズに応じて柔軟に対応していきたいところです。

【参考文献】
Peretti A, Amenta F, Tayebati SK, Nittari G, Mahdi SS. Telerehabilitation: Review of the State-of-the-Art and Areas of Application. JMIR Rehabil Assist Technol. 2017 Jul 21;4(2):e7. doi: 10.2196/rehab.7511.

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