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アキレス腱断裂術後のリハビリプロトコルについて

整形外科/スポーツ関連

アキレス腱断裂は復帰まで半年から一年くらいの期間がかかる、たいへんな外傷のひとつです。
私が勤務しているクリニックでも、アキレス腱縫合術後のリハビリや、ケースによっては保存的にリハビリ行っています。
手術の進歩もあって、術後リハビリのプロトコルは早期荷重を許可する傾向になっています。早期から適切な負荷を腱にかけたほうが修復過程にとってよいといわれています。

Olssonら1)は下記のような術後プロトコルで再断裂はなかったと報告しています。ただしこの研究では保存症例群と比較して身体機能面、活動面、生活の質において差がなかったという結果でした。保存症例の結果がそんなに良いことにちょっと驚きますね。
Olsson2013のプロトコル
術後0-2週  装具使用(ヒールパッド3つ). 2本の松葉杖を使用し、ヒールを通した体重はOK、6週間は装具を使用
術後2週~ 装具(ヒールパッド2つ)、全荷重、必要に応じて2本の松葉杖
術後4週~ 装具(ヒールパッド1つ)、全荷重
術後6週~ 装具(ヒールパッドなし)、全荷重
といった感じで2週ごとにヒールパッドを外していく、荷重は装具使用下で2週から可能な範囲でかけていく。
術後8週~ 装具外してOK. 両脚でのカーフレイズなどの運動をゆっくりと開始(求心性収縮から)
術後12週~ 徐々に片脚カーフレイズへ
術後16週~ 片脚カーフレイズを遠心性収縮も含めて実施. ゆっくりとジョグを開始.
術後18週~ 屋外でのジョグも許可.
術後20週~ ノンコンタクトスポーツ
術後24週~ コンタクトスポーツ

荷重や機能的なモビライゼーションはアキレス腱の修復を促すと考えられていますが、そのメカニズムはよくわかっていません。Valkeringら2)は荷重が代謝を増加させ早期から長期にかけての良好な修復を促しているのではと仮説を立て研究を行いまいた。
▸研究デザイン 
prospective  randomized  controlled  trial

▸対象と群分け
アキレス腱断裂術後患者を2群に分けた。
1) Mobilized and full weight‑bearing group (FWB) 27名
2) Immobilized and non‑weight‑bearing group (IMM) 29名

▸プロトコル
Mobilized and full weight‑bearing group (FWB)
術直後から理学療法士による機能的モビライゼーション
装具 (VACO ® ped, OPED  Gmbh,  Germany) を使用
術直後~術後2週 底屈15°–30° 
術後2~4週 底屈5°–30° 
松葉杖使用しての全荷重と装具着用しての可動域訓練はOK
1日1時間の装具外して非荷重下での可動域訓練は推奨

Immobilized and non‑weight‑bearing group (IMM)
術直後~2週 底屈30°でキャスト固定
術後2週~4週 a removable walker (Aircast ®  Standard walking brace, DJO International, Surrey, UK)
3枚のヒールウェッジ使用 
1週ごとに一枚ずつ外す
the walker着用で松葉杖使用しての全荷重はOK
1日1時間の装具外して非荷重下での可動域訓練は推奨

両群とも術後6週以降は制限なし。

▸代謝物質の解析
The  metabolites  analysed  in  the  microdialysis  dialysate(微小透析法による代謝物質の解析)
微小透析法は術後2週に実施(Glutamate,  glucose,  glycerol,  lactate,  pyruvate  and lactate/pyruvate  ratio)
修復腱の癒合組織のマーカーとしてprocollagen  I  N-Terminal propeptide  (PINP),  procollagen III N-Terminal propeptide (PIIINP), protein contentを使用。

▸機能的評価
・可動域
術後2週での両足関節背屈可動域
・術後6ヵ月.12ヵ月での筋の耐久性テスト
・踵上げの高さ、回数、トータルの仕事量についてThe Limb Symmetry Index (LSI  =  (injured/uninjured)  ×   100) を算出

▸ Result
・FWB群ではアキレス腱修復部のPINP濃度はGlutamate(グルタミン酸)と相関(r=0.6,  p= 0.005)したが、IMM群では相関なし。
・FWB群では修復腱部のPINPとグルタミン酸が相関(r=0.6,p=0.005)したが、IMM群では相関なし。  
・アキレス腱修復部のグルタミン酸濃度は6ヶ月時点の踵上げ高さと相関(r  =  0.5; p  =  0.014)。
以上のことから,早期の荷重と機能的モビライゼーションにより、修復腱周囲のグルタミン酸が増加しPINPも増加することが腱修復に良好な影響を与え、早期の機能改善も生じるのでは?ということのようです。ただし、長期(12ヵ月)ではどちらの群も差がないので、最終的なアウトカムには差がないようです。

私がアキレス腱術後の加速的リハビリテーションを行う際、腱の過度なエロンゲーションを起こさないことが重要と思っています。リハビリをする際の個人的なチェックポイントとしては、以下のようなところです。
毎回の縫合腱部の炎症程度(熱感、疼痛)のチェック。縫合腱部の状態を触診およびエコーでチェック。修復腱と周囲組織の癒着を起こさないように適切にモビライゼーションを行う。
腱部の装具を外した時の歩行はターミナルスタンスでのHeel-offの有無に注目。8週くらいではターミナルスタンスでHeel-offない場合がほとんどです。Heel-offするためには片脚でつま先荷重に耐えられる筋力が必要なので。Heel-offがない場合は歩幅を広げないように指導する。装具OFFになってからもすぐにフラットな靴は履かないように指導(踵のしっかりした運動靴、場合によってはHeel padを入れてもらう)。
ジョグは片脚カーフレイズがある程度できるようになってから。
あと、よくある愁訴として装具使用中の腰痛に対する対応。歩行中に股関節伸展が出にくい、立脚期後半で骨盤前傾が増強、足振り出し時に骨盤挙上する、などの理由で腰方形筋がStiffになっているケースが多いように思います。リハビリを進めていく上ではそのあたりのケアも併せてやっていくとよいです。
術後3ヵ月くらい経過していも片脚立位バランスがかなり損なわれているケースが多いです。アキレス腱の固有受容覚が異常になっているからのような気もしますがどうなんでしょう。調べてみたんですが、どんぴしゃな論文を見つけられませんでした。

アキレス腱断裂術後は、なかなか筋力が回復しなかったり、片脚hopなど速い収縮が不十分だったり、再断裂に対しての不安感が残ったりと、スポーツ復帰、パフォーマンス向上に時間がかかる場合も多いです。より良いリハビリテーションプログラムにしていけるよう今後も検討が必要な分野ですね。

参考文献
1)Stable Surgical Repair With Accelerated Rehabilitation Versus Nonsurgical Treatment for Acute Achilles Tendon Ruptures A Randomized Controlled Study.Am J Sports Med. 2013 Dec;41(12):2867-76. doi: 10.1177/0363546513503282. Epub 2013 Sep 6.
2)Olsson N, Silbernagel KG, Eriksson BI, Sansone M, Brorsson A, Nilsson-Helander K, Karlsson J. Valkering KP, Aufwerber S, Ranuccio F, Lunini E, Edman G, Ackermann PW. Functional weight‑bearing mobilization after Achilles tendon rupture enhances early healing response: a single‑blinded randomized controlled trial. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2017 Jun;25(6):1807-1816. doi: 10.1007/s00167-016-4270-3.

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