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骨粗しょう症の予防まとめ ~運動に関することを中心に~

フレイル

勤務しているクリニックで骨粗しょう症予防の講座or教室を企画しています。準備の一環として骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版を読み直してまとめてみました。
特に予防の面で運動に関しては運動指導をする関係で詳しく調べてみました。

骨粗しょう症とは?

骨粗しょう症は骨の「病的老化」で、明らかな「疾患」である。骨折は骨が脆くなるためにおこる合併症で、予防および治療が必要です。WHOの定義1)によると「骨粗しょう症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」とされています。

骨粗しょう症予防において重要なこと

骨粗しょう症の治療と予防の目的は、骨折を予防し、骨格の健康とQOLの維持改善をはかることです。

  1.  成長期に骨量を十分に増加させて高い最大骨量を獲得すること
  2.  閉経後女性の急速な骨量減少者を早期にスクリーニングし、骨量のさらなる減少を食い止めること
  3.  骨量がすでに著しく低下している高齢者においては骨量の維持とともに転倒の防止

骨粗しょう症有病率


一般住民での40歳以上の骨粗しょう症の有病率は、腰椎L2~L4で男性3.4%、女性19.2%、大腿骨の場合男性12.4%、女性26.5%との報告2)があります。

2005年の年齢別人口構成に当てはめて推計すると腰椎か大腿骨頸部のいずれかで骨粗しょう症ありとすると、その患者数は1280万人(男性300万人、女性980万人)と推計されます。

骨粗しょう症の予防


骨量変化の自然史と骨粗しょう症の予防方針と対策の概略図3)が予防の全体像をとらえるのに理解しやすいです。

若年者における予防

若年期に高い骨密度を獲得しておくと、後年になって骨密度の低下があっても、骨粗しょう症の発症や骨折閾値への到達を遅らせることが可能です。
そのため、若年期に可能な限り高い最大骨量を獲得すること、閉経後に必発する骨密度低下を可能な限り抑制することが重要です4-6)
18歳が最大骨量の獲得年齢であるためより高い最大骨量獲得のために最も効果的な介入時期は少なくとも18歳以前にあると考えられます。ですので、18歳までに強度のある運動を行うことが骨粗しょう症の発症予防に最も効果的です7)

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版の推奨グレード
栄養が充足している場合、少なくとも18歳以前に強度のある運動を行うことが、骨粗しょう症の発症予防に最も効果的である(推奨グレードB)

中高年者における予防

閉経者における歩行や太極拳などの軽い動的荷重運動は腰椎骨密度を有意に上昇させ、ジョギング、ダンス、ジャンプなどの強い動的荷重運動は大腿骨近位部骨密度を上昇させ、両者の組み合わせでは両部位の骨密度が上昇したとの報告8)があります。
一般中高年者に自己管理させるには歩行運動がリスクが低く、大腿骨頸部の骨密度上昇も期待出来て適切と考えられます9)
また転倒予防も骨折予防のために重要な観点です。2012年に発表された運動介入の転倒予防効果に関するメタアナリシスでは、多角的介入研究では転倒リスクの10%減、地域介入研究では9%減と報告されています10)

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版の推奨グレード
中高年男女には、適正体重の維持とやせの防止を推奨する(推奨グレードB)
一般中高年者には、歩行を中心とした運動の日常的実施を推奨する(推奨グレードB)
転倒予防の有効な方法は、運動を含む多角的介入(推奨グレードA)、ビタミンD投与(推奨グレードA)

運動指導


適切な運動は大腿骨近位部および腰椎の骨密度上昇に有用であることが複数のsystematic reviewとメタアナリシス研究で支持されています。主な運動介入は下記です。

  • 有酸素荷重運動、ウォーキング11)
  • 運動特に荷重運動と下肢筋力訓練8)
  • 下肢の運動12)
  • 太極拳13)

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版の推奨グレード
閉経後女性に対する運動介入には、骨密度を上昇させる効果がある(推奨グレードA)

また骨折を抑制するとの報告がある(推奨グレードB)

運動指導の具体的内容

運動指導の主な目的は、骨密度上昇、背筋強化、転倒予防などにより骨折予防に寄与することです。
Sinakiらは閉経後女性に対し、背筋の最大筋力の30%の負荷を背負って行う背筋強化訓練(1日10回、週5回)を2年間指導しその10年後に再評価を行った。結果、対象群に比べて運動群では背筋力と腰椎骨密度は優位に高く椎体骨折発生率は有意に低いことを報告しました14)
閉経後の骨量減少・骨粗しょう症患者(年齢:49~75歳)において、ウォーキング(8000歩/日、3日以上/週、1年は腰椎骨密度を1.71%上昇することが報告されています15)

また、ウォーキング(30分/日)と筋力強化(2日/週、1RMの40%の負荷で8~10回/日から開始)は骨密度維持に有用であるとの報告があります16)

HoweらのCochrane Systematic Review8)によると

  • 強度の高い漸増的な非荷重の下肢筋力訓練により大腿骨頚部骨密度は1.03%、腰椎骨密度は0.86%上昇
  • 歩行などの軽い荷重運動は腰椎骨密度は改善(0.87%)するが大腿骨頚部は変わらない
  • ジャンプやジョギングなどの強度の高い荷重運動は大腿骨頚部の骨密度上昇(1.55%)は認めるが、その他の部位では有意な差なし
  • 複合運動(荷重運動・筋力訓練)により大腿骨頸部は0.45%、腰椎骨密度は3.22%上昇する

といったところが述べられています。まだ質の高い介入研究は少ないようなので今後の研究報告も要チェックですね。

ガイドラインを読んでみて、ひとまずの運動に関するまとめとしては、歩行は基本的に推奨、強度の高い筋力トレーニングとジャンプなどの荷重運動は対象者の身体能力に応じてできる範囲で導入。数か月程度の短期的な介入の報告はないので、中~長期にわたって継続することが大切。という感じでしょうか

ガイドラインは2015年のものなので、2015年以降の研究についてもう少し調べて骨粗しょう症予防教室の内容を検討しなくては。

参考文献

1) Kanis JA. Assessment of fracture risk and its application to screening for postmenopausal osteoporosis: synopsis of a WHO report. WHO Study Group. Osteoporosis international : a journal established as result of cooperation between the European Foundation for Osteoporosis and the National Osteoporosis Foundation of the USA. 1994 Nov;4(6):368-81. Epub 1994/11/01.
2) Yoshimura N, Muraki S, Oka H, Mabuchi A, En-Yo Y, Yoshida M, et al. Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study. Journal of bone and mineral metabolism. 2009;27(5):620-8. Epub 2009/07/02.
3) 鈴木隆雄. 骨量の自然史と骨粗鬆症,骨折の予防戦略. 日臨床 2004; 62(増2): 225-32
4) Bachrach LK. Acquisition of optimal bone mass in childhood and adolescence. Trends in endocrinology and metabolism: TEM. 2001 Jan-Feb;12(1):22-8. Epub 2001/01/04.
5) Orito S, Kuroda T, Onoe Y, Sato Y, Ohta H. Age-related distribution of bone and skeletal parameters in 1,322 Japanese young women. Journal of bone and mineral metabolism. 2009;27(6):698-704. Epub 2009/05/12.
6) Southard RN, Morris JD, Mahan JD, Hayes JR, Torch MA, Sommer A, et al. Bone mass in healthy children: measurement with quantitative DXA. Radiology. 1991 Jun;179(3):735-8. Epub 1991/06/01.
7) Miyabara Y, Onoe Y, Harada A, Kuroda T, Sasaki S, Ohta H. Effect of physical activity and nutrition on bone mineral density in young Japanese women. Journal of bone and mineral metabolism. 2007;25(6):414-8. Epub 2007/10/31.
8) Howe TE, Shea B, Dawson LJ, Downie F, Murray A, Ross C, et al. Exercise for preventing and treating osteoporosis in postmenopausal women. The Cochrane database of systematic reviews. 2011 Jul 6(7):Cd000333. Epub 2011/07/08.
9) Martyn-St James M, Carroll S. Meta-analysis of walking for preservation of bone mineral density in postmenopausal women. Bone. 2008 Sep;43(3):521-31. Epub 2008/07/08.
10) Choi M, Hector M. Effectiveness of intervention programs in preventing falls: a systematic review of recent 10 years and meta-analysis. Journal of the American Medical Directors Association. 2012 Feb;13(2):188.e13-21. Epub 2011/06/18.
11) Bonaiuti D, Shea B, Iovine R, Negrini S, Robinson V, Kemper HC, et al. Exercise for preventing and treating osteoporosis in postmenopausal women. The Cochrane database of systematic reviews. 2002 (3):Cd000333. Epub 2002/07/26.
12) Polidoulis I, Beyene J, Cheung AM. The effect of exercise on pQCT parameters of bone structure and strength in postmenopausal women–a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Osteoporosis international : a journal established as result of cooperation between the European Foundation for Osteoporosis and the National Osteoporosis Foundation of the USA. 2012 Jan;23(1):39-51. Epub 2011/08/04.
13) Wayne PM, Kiel DP, Krebs DE, Davis RB, Savetsky-German J, Connelly M, et al. The effects of Tai Chi on bone mineral density in postmenopausal women: a systematic review. Archives of physical medicine and rehabilitation. 2007 May;88(5):673-80. Epub 2007/05/01.
14) Sinaki M, Lynn SG. Reducing the risk of falls through proprioceptive dynamic posture training in osteoporotic women with kyphotic posturing: a randomized pilot study. American journal of physical medicine & rehabilitation. 2002 Apr;81(4):241-6. Epub 2002/04/16.
15) Yamazaki S, Ichimura S, Iwamoto J, Takeda T, Toyama Y. Effect of walking exercise on bone metabolism in postmenopausal women with osteopenia/osteoporosis. Journal of bone and mineral metabolism. 2004;22(5):500-8. Epub 2004/08/19.
16) Asikainen TM, Kukkonen-Harjula K, Miilunpalo S. Exercise for health for early postmenopausal women: a systematic review of randomised controlled trials. Sports medicine (Auckland, NZ). 2004;34(11):753-78. Epub 2004/10/01.
17) Bolton KL, Egerton T, Wark J, Wee E, Matthews B, Kelly A, et al. Effects of exercise on bone density and falls risk factors in post-menopausal women with osteopenia: a randomised controlled trial. Journal of science and medicine in sport. 2012 Mar;15(2):102-9. Epub 2011/10/15.

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