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関節包や靭帯を介して筋が関節の安定化に関わるという考え方

整形外科/スポーツ関連

一年以上前から買って読もうと思っていた、『運動器臨床解剖学―チーム秋田の「メゾ解剖学」基本講座』を年末年始にようやく読みました。

運動器臨床解剖学―チーム秋田の「メゾ解剖学」基本講座―
運動器臨床解剖学―チーム秋田の「メゾ解剖学」基本講座―

これは総論だけでも読む価値ありますね。マクロ解剖学に関しての見方が変わります。機能を考えるときには個々の筋や靭帯といった組織を単一で考えるのではなく、もっと包括的に全体をとらえる必要があるんだなーと感じました。

学校で教わる解剖学レベルでは個々の筋や靭帯の機能を起始停止と含めて暗記するくらいのものですが、実際は筋や靭帯だけで人の体ができているわけでもなく、とても複雑なので臨床に出てからあれこれと解剖学についても学ばなきゃいけなかったりするんです。

解剖学的観察を行う際には、ひとつひとつの筋の構造を解析して理解することと、多くの筋の動きを総合的に理解することを、同時に考えることが必要で、機能を考えるときにはこの両方の視点が必要となる

運動器臨床解剖学―チーム秋田の「メゾ解剖学」基本講座

この筋に対する考え方って理学療法や運動療法を考えるうえでとても重要です。

あとは、靭帯、関節包といった静的な安定化機構として考えられている組織についても詳細な解剖を行うことで分かってくることも多いようです。

関節包は通常、補助靭帯で補強されているが、この靭帯には関節包とは独立している外在性の靭帯と、関節包の一部となっている内在性の靭帯とがある、ということであったり

関節包は、腱や靭帯とは異なり、さまざまな方向への力に対応するため、線維の方向は一定ではなく、さまざまに交錯している、ということも今まで深く考えることはありませんでした。

内在性の靭帯にさらにその上を走る腱や腱膜が連続することにより、関節の動きを制御したり安定させる役割を持つと考えられる

運動器臨床解剖学―チーム秋田の「メゾ解剖学」基本講座

関節の安定化という機能を考えるうえで、筋・筋膜・腱・腱膜・靭帯・関節包・軟骨といったすべての組織を包括的にとらえることで理学療法のアプローチも変わってきそうです。

「肘の内側の安定化」の章では星加先生がこのように述べています。

関節構造の理解には「靭帯」という概念を一度忘れて、腱や筋、筋膜といった関節周囲構造に基づいた包括的な理解が必要となる 

運動器臨床解剖学―チーム秋田の「メゾ解剖学」基本講座 p84

ここで参照されている論文に関しては、内側型の野球肘や肘の内側側副靭帯損傷のリハビリをするうえで非常に面白い視点をくれます。

要点としては肘の内側の安定化機構には下記のような連続があるということです。

  • 円回内筋(PT)と浅指屈筋(FDS)の間に膜厚な腱性中隔が存在し、FDS深層腱膜へと連続
  • FDSと尺側手根屈筋(FCU)間にも同様に腱性中隔が存在し、FCUの深層腱膜へと連続
  • Masson’s trichrome染色ではPT/FDS間の腱性中隔は濃染された膠原線維として認められ、FDS深層腱膜や上腕筋腱へと連続
  • FDS/FCU間の腱性中隔はFCU深層腱膜へと連続
鈎状突起結節レベルの冠状断での回内屈筋群と腱性中隔の関係 文献1より引用 一部改変

“肘の安定化構造を「靭帯」とは異なる腱性構造と関節包という解剖学的観点から再考すると、既知のUCLは2つの腱性中隔、FDS、FCUの深層腱膜、ならびに上腕筋腱の内側部からなる腱性複合体の一部であると考えられる。その結果、肘内側の安定化はFDSを中心とするPTや上腕筋などの回内屈筋群が腱性中隔に対し、各方向に聴力を発揮してマストのように関節に力を伝えてバランスをとって動的に安定化していると想定される。”

ということから、

“「痛み」=「靭帯損傷」という論理ではなく、筋バランスの悪化による痛みであると考えると、それらの筋バランスの悪化を評価し、指屈筋を含めたリハビリテーションプログラムによって不要な手術を減少させられる可能性を秘めている。”

と述べられています。この論文読んでから私もリハビリプログラムに反映させています。

この指屈筋のリハビリプログラムの効果については研究されている先生もいるので、今後論文で発表されるのではないでしょうか。楽しみです。

股関節の安定化に関しては、腸骨大腿靭帯と小殿筋、腸骨筋との結合があることから、腸骨大腿靭帯を動的安定化機構のひとつと論じたこの論文がとても面白いです。

要点としては、

  • 小殿筋腱は関節包に連続し,その外側端は大腿骨転子間線の上外側端で大腿骨の結節に隣接
  • 腸腰筋の深層筋も関節包に連結し,その前縁の内側端は転子間線の内側端と一致
  • マイクロCT解析で、小殿筋腱との接続基部と腸骨深層筋の前縁に被膜の肥厚があった
  • 組織学的検討の結果、小殿筋腱と腸骨筋深層部は股関節包と連続

したがって、

いわゆる腸骨大腿靭帯は、関節包複合体を介して関節に筋力を伝達する機能を持つ、動的安定化装置とみなすことができる。

とのこと。

小殿筋と腸骨筋と関節包の結合部分 文献2より引用 一部改変

この文献はフリーで読めるのですが、腸骨大腿靭帯のところ以外にも、股関節の解剖をぐるっときれいに見せてくれていてすごくありがたかったです。

股関節包を前方から見たところ 文献2より引用
股関節包を後方からみたところ 文献2より引用
股関節全体の被膜の外観とその厚み分布 文献2より引用

こうやって見せてもらうと、股関節前方内側から、

腸骨筋(IP)、小殿筋(GMi)、内閉鎖筋(OI)、外閉鎖筋(OE) の順でぐるっと股関節包に連続して関節の安定化に寄与しそうな感じがイメージできます。

この知見は股関節のリハビリを考えるうえで使えそうで、今後の運動療法の発展にワクワクしますね。

参考文献

1 Hoshika S, Nimura A, Yamaguchi R, Nasu H, Yamaguchi K, Sugaya H, Akita K. Medial elbow anatomy: A paradigm shift for UCL injury prevention and management. Clin Anat. 2019 Apr;32(3):379-389. doi: 10.1002/ca.23322. Epub 2019 Jan 9. PMID: 30521139; PMCID: PMC6850211.

2 Tsutsumi M, Nimura A, Akita K. New insight into the iliofemoral ligament based on the anatomical study of the hip joint capsule. J Anat. 2020 May;236(5):946-953. doi: 10.1111/joa.13140. Epub 2019 Dec 22. PMID: 31867743; PMCID: PMC7163583.

運動器臨床解剖学―チーム秋田の「メゾ解剖学」基本講座―
運動器臨床解剖学―チーム秋田の「メゾ解剖学」基本講座―

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