膝蓋腱炎/ジャンパーズ二―は、腱の変性も伴うことがあるため難治性になるとなかなか治療にてこずります。現在、エビデンスのある運動療法として遠心性収縮トレーニングとHeavy Slow Resistance trainingがあります。理学療法士としてできる治療としては、筋のタイトネス改善や膝蓋腱に負荷のかかる動作(特にジャンプ系)の修正などなど。
膝蓋腱炎について調べてみた内容をもとに治療概観図を作成してみました。
Patellar tendinopathy (膝蓋腱障害)とは?
- 膝蓋腱にTendinitis(腱炎)とTendinosis(腱変性)が生じる有痛性の疾患
- オーバーユースに起因する
- 膝蓋腱近位後方に好発する
- 膝蓋腱は血流が不十分な箇所がありTendinosisが生じやすい
- 発症メカニズムは不明な点がある
Pearson et al. Sports Med, 2014
発生率と有病率
- 発症率
欧州体育大学の138人を対象とした研究 2年follow up 発生率13.8%
Witvrouw E et al. AJSM, 2001 - 有病率
バスケットボールやバレーボールなどジャンプ動作を多く含むスポーツの有病率が高い傾向
国際試合レベルの選手の有病率→バスケットボール 31.0% バレーボール 44.6%
Lian OB et al. AJSM, 2005
レクリエーションレベルの選手→バスケットボール 11.8% バレーボール 14.4%
Zwerver J et al. AJSM, 2011
内因性リスクファクター
- 大腿四頭筋,ハムストリングスタイトネス Witvrouw et al. AJSM, 2001
- 足関節背屈角度の低下 Backman et al. AJSM, 2011
- ジャンプ力が高い Visnes et al. BJSM, 2013
- 回外足 De Groot et al.CJSM, 2012
- 体重,BMIの増加 Van der Worp et al.BJSM, 2011
ジャンプ着地のバイオメカニクス
- 着地期前期での足関節底屈角度の減少
- 遠心性収縮期での膝関節屈曲角度の低下
- 膝関節伸展モーメントの増加,膝関節角速度の増加
Bisseling et al. BJSM, 2008
治療
Strong evidence 強いエビデンス
► Eccentric training
遠心性のトレーニング
Moderate evidence 中等度のエビデンス
► conservative treatment (heavy slow resistance training) as an alternative to eccentric training
低速の高強度抵抗運動
► low-intensity pulsed ultrasound treatment did not influence treatment outcomes
超音波は治療の結果に影響しない
Limited evidence 限られたエビデンス
► surgery 手術
► sclerosing injections
► shockwave therapy 体外衝撃波
Larssen et al. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc, 2012
治療概観図
腱障害につながるリスクを黄色字、治療を緑字にして概観を描いてみました。
現状では保存療法の進め方として、遠心性収縮トレーニングもしくはHeavy Slow Resistance トレーニングを導入することは必須。そこに加えて理学療法のできることとして、エビデンスのあるもう一手、何か欲しいところです。
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