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ひとつのスポーツに特化するのと、複数のスポーツをやることはどちらがケガのリスクが低いか?

整形外科/スポーツ関連

日本では中学生くらいから高校、場合によっては大学まで主にひとつのスポーツに打ち込むことが多いかと思います。私も小学4年生頃から高校までほぼ野球をやっていました。高校生の頃は、学校の体育や球技大会以外では野球しかやっていない状況で、土日や夏休みなどもほとんど休みなく練習していたような高校生活でした。同じ部活の仲間との交流は深くなり、今でも連絡を取り合う仲でそういった面で得られたものは大きいですが、学生生活の多様性は失ってしまったのが心残りです。大学に入ってサークル活動などでいろいろなスポーツやバンドなどの文化活動を行い、多様な経験をすることの楽しさを知りました。もう一度高校生活をやり直すならおそらく野球だけに打ち込むことはないでしょう 笑

同じスポーツに特化して年中、何年にもわたりやり続けることの弊害として、ケガのリスクを高めることが報告されています。The American Journal of Sports Medicineで、ひとつのスポーツに特化するのと、複数のスポーツをやることはどちらがケガのリスクが低いかについてのメタアナリシス1)が出ていたのでまとめてみました。

▸背景
過去10年間で1スポーツに特化したユースアスリートの普及率が増加し、それに伴い青少年スポーツ選手の傷害率も増加している。青少年のスポーツ専門化とスポーツ傷害率には関連性がある可能性がある。

▸目的 
青少年においてひとつのスポーツに特化している場合(sport specializer)と比較して、複数のスポーツを行う場合(sport sampler)がスポーツ傷害率の低下と関連しているかどうかを検討する。

▸研究デザイン
システマティックレビューとメタアナリシス

▸方法 
システマティックレビューは、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)ガイドラインに従って、PubMed、Embase、コクランライブラリを使用して実施。取り込み基準は、英語、7~18歳のアスリートを対象、傷害率を報告している、アスリートがsport samplerかsport specializerかどうかを特定している研究。ケガの内容および患者の特徴など、本研究に関連するデータを抽出し、統計学的に分析。

アスリートを、ひとつのスポーツに特化 (sport specializer) or 複数のスポーツ (sport sampler)、どちらにも分類できない(その他)の3つのグループに分類した。

▸結果 
最初の検索では324件の研究が同定され、そのうち6件が取り込み基準を満たした。6件の研究の、総参加者数は5736人(2654 boys [46.3%]; 3082 girls [53.7%])。そのうち、2451人(42.7%)が「sport sampler」、1628人(28.4%)が「sport specializer」、1657人(28.9%)が「その他」とされた。

研究では、自己分類尺度(単一または複数のスポーツ)、または 3 点専門化スケールを使用して分類。
3点専門化スケールは、アスリートに次の3つの「はい」か「いいえ」かの質問をして、「はい」と答えた場合は1点。0~1点の場合は「sport sampler」、2点は「その他」、3点は「sport specializer」。(1) 1つのスポーツに集中するために、他のスポーツを辞めたことがありますか?(2) あなたは他のスポーツよりも自分のメインスポーツを重要だと考えていますか?(3) 主なスポーツのトレーニングを年間8ヶ月以上行っていますか?

全アスリートの平均年齢は14.6歳(範囲7~18歳)。

6件の研究のうち4件の研究論文を用いてケガリスクについてのメタアナリシスが行われています。その結果は、

ひとつのスポーツに特化した「sport specializer」は、複数のスポーツを行う「sport sampler」よりも傷害リスクが有意に高かった(RR、1.37;95%CI、1.19-1.57;P < 0.0001)。

Carder SL, Am J Sports Med, 2020.1)より引用、一部改変

また、「その他」群では、複数のスポーツを行う「sport sampler」群と比較して傷害リスクが高かった(RR、1.21;95%CI、1.14-1.29;P<0.0001)。

Carder SL, Am J Sports Med, 2020.1)より引用、一部改変

さらに、ひとつのスポーツに特化した「sport specializer」群では、「その他」群に比べて傷害のリスクが高かった(RR、1.09;95%CI、1.04~1.14;P<0.005)。

ということで、青少年期には複数のスポーツを行うほうがケガのリスクを減らせるよ、という結論になっています。

興味深かったのが、メタアナリシスに含まれていない McDonaldら2)の研究です。米国レスリングと全米大学体育協会 (NCAA) ディビジョン I レスリングから世界とオリンピック チームのメンバーに対して、どの年齢でレスリングを唯一のスポーツ (specialization) として選択したか?と、レスリングに専門化する前と後の負傷の数を調査。12歳前にレスリングに専門化した選手と 12 歳以降に専門化した人との間でケガの数を比較した。この研究では、早期に専門化した選手の方が、しなかった選手よりも多くのケガをしていたことが示されました。

スポーツによるとも思いますが、トップクラスのアスリートであっても早期にひとつのスポーツに特化することによるケガのリスクがあがる可能性があることは興味深いです。

今回のシステマティックレビューに取り込まれた論文の研究の質としては、レベルIIの研究が1件、レベルIIIの研究が3件、レベルIVの研究が2件。含まれた研究が提供するエビデンスレベルを考慮すると、利用可能なデータが限られているため、推薦の強さ分類基準のレベルはB。すべての研究は、複数のスポーツを行う「sport sampler」が青少年アスリートの傷害発生率の低下と関連していることに同意しているが、A評価を得るためには、より高いレベルのエビデンスを持つ研究が必要。ということで、更なる検討の余地はありますが、今回の論文の結論はそうそう覆らないと思われます。

こういう検討は日本ではできないですねー。日本人は多くの中高生がひとつのスポーツに特化してケースがほとんどかと思います。

論文中で言及されていますが、ひとつのスポーツのみに特化していた場合、ケガをした選手は完全にスポーツをやめる可能性が高くなります。青少年アスリートの20%以上が怪我のためにスポーツから脱落しているが、これは若者アスリートのスポーツ脱落の2番目の主要な原因となっているとのことです3)。また、選手はオーバーユースによるケガを報告する可能性が低く、ケガの悪化や認知不足につながる可能性も指摘されています。

その点、複数のスポーツを行うスポーツサンプリングは、スポーツの燃え尽き率低下、リーダーシップスキルの向上、ソーシャルスキルの向上と関連している4)。さらには、強度、スピード、持久力、および運動協調性などの運動技能の向上と関連している、といわれているようです5)

複数の研究で指摘されているスポーツサンプリングの利点は下記の二つです。

  1. 基礎的な運動技能の向上によりケガの減少につながる
  2. 同じ動作の反復運動が少なくなることで、オーバーユースによるケガが減少する

ケガのリスクからみても、日本のひとつの部活中心の学生スポーツのあり方も見直す必要がありますね。

参考文献
1) Carder SL, Giusti NE, Vopat LM, et al. The Concept of Sport Sampling Versus Sport Specialization: Preventing Youth Athlete Injury: A Systematic Review and Meta-analysis [published online ahead of print, 2020 Jan 21]. Am J Sports Med. 2020;363546519899380. doi:10.1177/0363546519899380

2) McDonald C, Deitch J, Bush C. Early sports specialization in elite wrestlers. Sports Health. 2019;11(5):397-401.

3) Conn JM, Annest JL, Gilchrist J. Sports and recreation related injury episodes in the US population, 1997-99. Inj Prev. 2003;9(2):117-123.

4) DiStefano LJ, Beltz EM, Root HJ, et al. Sport sampling is associated
with improved landing technique in youth athletes. Sports Health.
2018;10(2):160-168.

5) Fransen J, Pion J, Vandendriessche J, et al. Differences in physical fitness and gross motor coordination in boys aged 6-12 years specializing in one versus sampling more than one sport. J Sports Sci. 2012;30(4):379-386.

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