新型コロナウィルスがどんどん身近にはびこっているのを感じています。私の妻も理学療法士として老健施設とデイケアで働いていますが、デイケアの利用者の自宅に来ているヘルパーにコロナ陽性の方がいたそうです。その連絡が妻の施設側に入ったのが、PCR検査での陽性確定から約4日後。濃厚接触者の追跡がかなり間に合っていないことがうかがえます。感染者および濃厚接触者がいたるところにいる、いつのまにか自分も感染者かもしれない、そういう危機感が私にはまだ足りなかったように思います。戸愚呂弟に「おまえもしかしてまだ 自分が罹らないとでも思ってるんじゃないかね?」と言われてしまいそうです。
まずは、感染されたヘルパーさんのご無事と、利用者さんやその周囲の方々に広がらないことを願います。ヘルパーさんもリスクが高い仕事ですよね、日々多くのストレスと不安に向き合いながら仕事をされていることと思います。
現在の不安は大きく分けて2つあります。感染することに対する不安と仕事がなくなり収入がなくなる不安です。その二つの不安を天秤にかけた時に、感染の不安が重ければ仕事を自主的に辞めようという判断になるでしょうし、収入の不安が重ければどんな仕事でも続けようと思う。実際には、それに加えて仕事に対するプライドや使命感が最前線で尽力している方を支えてなんとかやっている場合もあるでしょう。4月に入ってからこのバランスが、感染の不安のほうへどんどん傾いている感じがします。このままだとスーパーなど生活必需品の小売りで働くスタッフ、病院の事務職、介護職やナースの大量離職も近いかもしれません。そうならないように、不要不急の外出を避けたり、社会を支えている方々に感謝を表したりといったことを日々心掛けたいです。
さて、前回は三密を避けるという観点からリハビリテーションを見直してみました。今回はリハビリ関連の課題として、減るもの増えるものと年代別の課題についてまとめてみようと思います。
リハビリ関連の減るものと増えるもの
私が関わる整形外科分野のリハビリテーションの課題について、ざっくりと減るものと増えるものに分けたのが下の図です。
感染症拡大防止のために3つの密を避けるというのが基本方針になるため、集まって何かをするということがNGになっています。そのため、社会的な交流の場は減少しています。高齢者にとっては地域の通いの場や、自主的なグループでの活動がストップしている状態です。フレイル増加まったなし。高齢者の場合、一度要介護状態になってしまうとそこから改善するのは難しいこともあるので、対策が急務です。
また、若年層にとっては運動する場所や機会が失われています。現状どこでもできるスポーツは個々人でのランニングや自転車などくらいでしょう。特に屋内での運動は今後も当面できない可能性があります。それに伴い、整形外科分野の大部分を占めるスポーツによる障害や外傷は減少しています。スポーツ外傷後の手術に関してもそもそものケガが減っていることから減少していますし、おそらく大病院では感染症対策の病棟やスタッフを増やす関係で、整形外科の手術ができない状況になっているかもしれません。ですので術後のリハビリが必要な患者も減ります。
スポーツに関しては、大会が開催できない状態が続いています。スポーツに打ち込んでいた学生は目標を失ってしまっているでしょう。目標を突然に失ってしまうことは精神的にもあまりいいことではありません。目標がなければ、自宅でのトレーニングも続けられないでしょう。
逆に増えているものとしては、なんといっても自宅で過ごす時間です。学校がない学生、テレワークの会社員、集まる場のない高齢者、みんな自宅での時間が増えています。そうなると、身体を動かす機会はどうしても減りますから運動不足は増えます。運動不足になると肩こりや腰痛などの慢性痛の悪化が懸念されます。長期的な目で見ると、ストレスや肥満などにより生活習慣病も増えてくる可能性もあります。
こういった状況をうけて自宅でできる運動のニーズは非常に高まっていると考えられます。現在もYoutubeなどでの運動配信、Zoomなどのビデオチャットを利用したオンラインエクササイズ指導、オンラインでダンスレッスンなどのサービスを利用している方も多いと思いますし、今後もこの傾向は続くでしょう。
ただ、ずっと屋内で運動しているのはなかなかきついものがあるので、屋外で運動したい欲求はたまります。安全に再開できる屋外でのスポーツ、密集しない、密着しないでできるものから徐々に再開していけるとよいですね。そのための環境づくりを進めていく必要があります。
年代別の課題
先にあげたそれぞれの課題を年代別に分けたのが下の図です。
こうやってまとめてみると、全年代を通して社会的な交流の減少と身体的な運動の減少を起点として様々な課題が増加してくるように思います。理学療法士がまずできることは適切なエクササイズや運動を提供することですね。あとは社会的なつながりを保つ方法を模索すること。
私は勤務しているクリニックでスポーツの大会に向けて日々厳しいトレーニングをしている学生を多くみているので、その子たちがでられる大会がなくなってしまうことが本当に悲しいです。私のようなすでにおっさんの1年はあっという間ですが、学生にとっての1年は本当に貴重な濃密な時間なので、どんな形であれスポーツに打ち込んできたすべての学生に力を発揮する場が与えられることを願います。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、人間の社会性と運動したいという本能に対して大きな戦いをもたらしています。この戦いの先には新たな世界が開かれていくと感じています。私は理学療法士としてより良い世界を作っていくためのリハビリテーションのあり方を引き続き考えていきます。
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