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長距離ランナーのケガと関連する走行フォームの特徴は?

整形外科/スポーツ関連

2007年東京マラソンが始まったころからランニングブームが起こり、健康への意識の高まりとあいまってランニング人口が増加しました。

笹川スポーツ財団のジョギング・ランニング実施率の推移によると、年1回以上ランニングする人の割合は2012年の9.7%をピークに2016年には8.6%と減少したものの、おおよそ893万人が年に1回以上はランニングするという推計となっています。
そのうち週1回以上ランニングする人は467万人ということで依然として多くの人がランニングをしています。

ランニングは慢性的な筋骨格系の疼痛を引き起こすことがあります。ランニング関連で起きやすいケガとしては、膝蓋大腿関節痛(Patellofemoral pain; PFP)、腸脛靭帯炎(Iliotibial band syndrome; ITBS)、シンスプリントなどの脛骨内側の疼痛(Medial tibial stress syndrome; MTSS)、アキレス腱障害(Achilles tendinopathy; AT)、足底筋膜炎(Plantar fasciitis)、疲労骨折などがあります1,2)

いままでにも多くの研究でランニング中のフォームとケガの関連が示されてきています3,4,5)
上記のようにさまざまなケガがありますが、ケガが起きている人に共通の走行フォームの特徴があるのではないかという仮説のもと行われた興味深い研究6) があったので紹介します。

▸研究デザイン
Controlled laboratory study

▸対象
ケガのあるランナー72名(男性28名、女性44名)
ケガのない健常ランナー36名(男性15名、女性21名)

ケガのあるランナーの内訳は、膝蓋大腿関節痛18名、腸脛靭帯炎18名、脛骨内側痛18名、アキレス腱障害18名
採用基準は、最近上記診断されており、10分間までは疼痛なく走れて、走行中に疼痛が出現したときの疼痛の強さがNRSで3以上、現在は治療を受けていない、少なくとも3ヵ月の間はケガや疼痛のためにランニングの量や頻度を減少させていること。
不適切なトレーニング量の増加が原因の疼痛を除外するために、週に30%以上トレーニング量を増加させて疼痛が発生した者は除外した。

健常ランナーは、過去18ヵ月のあいだ、週に30マイル以上の距離を走っている者

計測
トレッドミル上を3.2m/sの速度で走行してもらい、5分のウォームアップ後30秒間を12台のカメラ (240 Hz; Qualisys)で計測した。

イニシャルコンタクト時の矢状面と前額面上の体幹、骨盤、股関節、膝関節、足関節の角度とミッドスタンス時の各関節のピーク角度(これはイニシャルコンタクト~トーオフ間の最大角度と定義)を算出した。

▸結果
ケガのあるランナー vs 健常ランナー
ケガのあるランナーにてイニシャルコンタクト時の膝伸展角度(effect size 0.87)と足背屈角度(effect size 0.71)が大きかった。また、ミッドスタンスにて体幹の前傾角度(effect size 0.65)と骨盤の対側傾斜(effect size 1.37)、股内転角度(effect size 0.89)が大きかった。

前足部接地と後足部接地間では差はなかった。

ケガのあるランナーのケガ別の違い
膝蓋大腿関節痛と脛骨内側痛群が腸脛靭帯炎群に対して股内転角度が大きかった。

回帰分析の結果
ミッドスタンスでの骨盤の対側傾斜(odds ratio, 1.87 [95% CI,1.41-2.49]; P ≦.001)とイニシャルコンタクト時の膝屈曲角度(odds ratio, 0.87 [95% CI, 0.78-0.97]; P = .012)がケガのあるランナーと健常者を分ける予測因子であった(R2 =0.466)。
骨盤の対側傾斜がもっとも影響の大きい因子だった。

Bramah,2018より引用一部改変 イニシャルコンタクト時の矢状面  ケガのあるランナーにて体幹前傾、膝関節伸展、足関節背屈が大きい

Bramah,2018より引用一部改変 ミッドスタンスでの前額面上の骨盤と下肢アライメント ケガのあるランナーにて骨盤の対側傾斜と股関節内転が大きい

Bramah,2018より引用一部改変 反対側への骨盤傾斜角度

Bramah,2018より引用一部改変 股関節の内転角度

▸Limitations
ケガの発症に対して後ろ向きの研究になるので今回の走行フォームの特徴がケガの原因となるかはわからない。今回明らかとなったフォーム特徴はケガが発生してからの適応的な変化である可能性が否定できない。

▸臨床的な応用の可能性
1)骨盤傾斜などのパラメータは2次元の動作解析でも計測しやすい。2次元の動作解析は臨床の場で行う方法がいくつかある。
2)今回明らかになった走行フォームの特徴は、修正できるという報告が既にいくつかあり、今後のリハビリテーションプログラムへ応用できる。

引用文献
1. Lopes AD, Hespanhol Junior LC, Yeung SS, Costa LO. What are the main running-related musculoskeletal injuries? A systematic review. Sports Med. 2012;42(10):891-905.
2. Taunton JE, Ryan MB, Clement D, McKenzie DC, Lloyd-Smith D, Zumbo B. A retrospective case-control analysis of 2002 running injuries. Br J Sports Med. 2002;36(2):95-101.
3. Barton CJ, Bonanno DR, Carr J, et al. Running retraining to treat lower limb injuries: a mixed-methods study of current evidence synthesised with expert opinion. Br J Sports Med. 2016;50(9):513-526.
4. Davis IS, Bowser BJ, Mullineaux DR. Greater vertical impact loading in female runners with medically diagnosed injuries: a prospective investigation. Br J Sports Med. 2016;50(14):887-892.
5. Noehren B, Davis I, Hamill J. ASB Clinical Biomechanics Award Winner 2006: prospective study of the biomechanical factors associated with iliotibial band syndrome. Clin Biomech. 2007;22(9):951-956.
6.Bramah C, Preece SJ, Gill N, Herrington L. Is There a Pathological Gait Associated With Common Soft Tissue Running Injuries? Am J Sports Med. 2018 Oct;46(12):3023-3031. doi: 10.1177/0363546518793657. Epub 2018 Sep 7.

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