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“一症例恐るべし” 症例報告のすゝめ

本の感想や雑感など

患者が最良の教師である。
一見平凡に見える病気であっても医療者が真剣な態度でこれに接すれば,つねに何か新しい発見があるはずである。
臨床研究者の第一条件は注意深い観察である。 (砂原茂一著 臨床医学研究序説 方法論と倫理 p35-36より引用)

最近、後輩の症例報告を手伝っています。人に伝えられるように臨床経過をまとめるって慣れないと難しいことですよね。今回、後輩はカルテデータから後ろ向きに記録をまとめているので、客観的な評価のぬけがあったりして、なかなか大変。。日々の臨床でしっかり評価ををとってカルテに記載しておくことは基本ですよ。。とりあえずCARE case report guidlinesを教えて症例報告まとめ方の概要を伝えておきました。
こうやって振り返ってまとめた時に必要だった評価を考え、自分の臨床を振り返ることは治療者の経験値を上げるうえで大事なことです。

私個人としては症例報告はとても大切にしていて、毎年、学会発表をしたり院内で発表したりしています。自分が働きはじめて三年目くらいまでに当時働いていた職場では徹底的に症例検討をしていました。それはもう夜遅くまで、、、、、、
症例検討をするなかで、もっとよく出来たはず、そんな悔しい思いもたくさんして、当時の私の指導者に「その思いを次の患者に活かしなさい」と言われたのを今でも覚えています。

日々の臨床、その一瞬一瞬が勝負。 その一回しかないかもしれない治療でどれだけ対象者を良い方向へ導くことができるのか。
ですが、当然その時に自分の経験・知識(Clinical expertise)が少なければ、その時点でベストな治療ができないということになってしまいます。
残念ながら、経験の浅いときには往々にしてあることです。Evidence-Based Medicine(科学的根拠に基づいた医療)1)が十分に機能しない。

ただ、その経験と反省を、次の患者に活かすことができれば、自分の治療スキルもあがってよりその時点でのベストな理学療法に近づくことができます。

もしその自分の経験した症例が難しいケースもしくは珍しいケースだったならば、発表する、できれば論文として公表することで、それを読んだどこかの誰かが診ている患者が助かる可能性がある。
治療法に新たな展開を見いだせれば、今までにない有効な介入方法にたどり着くかもしれない。

それってわくわくしませんか?

実際に一例の発見から体系的な研究に発展し新たな治療法が生まれることだってあります。
リハビリ界隈で有名なところで言うとラマチャンドラン博士の”幻肢の切断術”の発見から始まったミラーセラピー。
(ちなみにラマチャンドラン博士はTEDで講演しているのでぜひ見てみてください。とても興味深いです。)

症例報告の位置づけはエビデンスのピラミッドの最下層になります。エビデンスレベルの下のほうにあるということを自覚してなお、臨床で日々いろんな方に理学療法を提供している身としては重要なのです。自分がエビデンスを作るとしたらまずは症例報告からになりますし。
珍しいケースの場合に文献を検索していると、症例報告しか見当たらず、読んでみると意外にそれが目の前にいる患者に新たな光を照らしてくれることもあります。痒い所に手が届くときがあるというか。

2016年に発表されたMuradら2)の新しいピラミッドでは、エビデンスの評価方法であるGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)を受けて、ピラミッドの横のラインは水平ではなく波打っているモデルを提唱しています。研究デザインだけでエビデンスのレベルが決まるわけではないということですね。

 

医療者として、理学療法士として働いている以上、常に最新の知見をキャッチしてそれを踏まえたうえで、よく考えられた症例報告をしてエビデンスの構築、医療の発展にいきたいと思います。

 

 

臨床研究の場合は、自分の偶然遭遇した一例から、巨大な体系的研究に発展することは珍しくないわけだから一例報告を重視しなくてはならない。  (臨床医学研究序説 方法論と倫理 p68)

“一症例恐るべし”   by 砂原茂一 先生

参考文献
1. Sackett DL, Rosenberg WM, Gray JA, Haynes RB, Richardson WS. Evidence based medicine: what it is and what it isn’t. BMJ (Clinical research ed). 1996 Jan 13;312(7023):71-2. Epub 1996/01/13.
2. Murad MH, Asi N, Alsawas M, Alahdab F. New evidence pyramid. Evidence-based medicine. 2016 Aug;21(4):125-7. Epub 2016/06/25.

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