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システム思考で理学療法の効果的な介入ポイントを見つけよう!

本の感想や雑感など

最近、ピーターセンゲの「学習する組織」を読みました。まだ消化しきれていないところも多いですが、いろいろと学びがあり、今後の人生の指針となるような気づきもあり、また折を見て読み直したいと思う名著でした。

「学習する組織」にとっての「第五のディシプリン」と位置付けられているのが「システム思考」という思考法なのですが、これ、理学療法にもすごく使える思考法ですね。

センゲの言葉を借りると“システム思考は、生きているシステムに固有の性質を与える、とらえにくい相互関連性をとらえるための知覚能力”であり“システム思考のディシプリンの本質は、意識の変容にある。”とあります。

ちょっと分かりにくいのでWikipediaでシステム思考を検索すると、下記のように説明されています。

企業や自治体の経営課題、環境問題といった複雑な社会システムの課題解決のため、「システム」「情報」「制御」という概念ツールを組み合わせてものごとを考えていくアプローチがシステム思考である[1]。 「システムとしてとらえる」とは事象を体系的に見ることであり、事象の要素細部を見るのではなく、全体のシステムを構成する要素間のつながりと相互作用に注目し、その上で、全体の振る舞いに洞察を与える。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia) システム思考

システムとは「複数の要素が情報やモノ、エネルギーなどの流れでつながり、相互に作用しあい、全体として目的や機能を有する集合体」。

人間の体もシステム。

理学療法は、部分を治すのではなく、身体(場合によっては心理•認知面)のつながりを常に考え、治療を行う。木も見て、森も見る。虫の目と鳥の目の行き来の中で、どんな治療を選択するかを考える。

「医師は構造を治し、理学療法士は機能を治す」と言ったりもしますが、実際には機能と構造は密接な関係なので、車の両輪のようなものと捉えたほうが良いと思います。

そして、身体全体としてのある機能を発現させるのはシステムによって。

つまり、人間をひとつのシステムとして考え、そのシステムの不具合が疾患、疾病と考えることができます。具体的に表象されるシステムの障害は、構造の破綻や特定の機能の破綻によってもたらされる。すべての要素を大枠で捉えるのがシステム思考。

システム思考は、すべての影響には原因の作用もあるし結果の作用もあると捉えて、線形の因果関係よりも、相互関係に着目します。

さらに、その瞬間のスナップショットよりも、時間の影響も加味した変化のプロセスに目を向けることが重要です。疾病や疾患の成り立ち、また回復の過程においても時間の要素というのは大きな意味を持ちます。

肩関節疾患で例をあげると、

肩関節の関節唇の損傷や腱板の断裂は、スポーツなどの反復動作や過剰な負荷によって生じる構造の破たんですが、肩関節の機能的な問題が先行して存在することもあれば、構造の破たんが先で機能障害を起こす場合もあります。

そして、何らかのケガで肩関節周囲に炎症を起こしたり、損傷を生じた場合には、疼痛回避の動作や筋緊張の異常により時間とともに症状が悪化したり慢性化したりすることで、悪循環に陥ってしまっていることもあります。

肩関節の機能とは何かを考えてみると、軟部組織のタイトネスやローテーターカフと他の筋群のアンバランスによる肩甲上腕関節のアライメント不良や安定性の低下は狭い範囲での肩関節機能、肩甲/胸郭/脊柱などを含めた運動を肩関節の運動と捉えるのがやや広い範囲での肩関節機能、更に広げて体幹下肢、更には反射やスポーツのスキルなどの要素をつなげて捉えることも可能です。

こうやって身体の構造や機能をつなげていくとどこまでも広げていけそうです。さらに時間の要素を加味することでより問題点が複雑になってきます。ただ、アプローチをする場所はどこにするか?遠いところでよいのか?肩の治療をするのにいきなり足の治療から入ってよいのか?

または現在起きている疼痛などの症状を、ただ緩和することだけを目的とするような対症療法だけでよいのか?

システム思考では対症療法は短期的な利益をもたらすだけであり長期的には問題を解決しない、と考えます。対症療法はそれが対症療法であると認識されていなければならず、「問題のすり替わり」を防ぐために、対症療法と同時に根本的な解決を図る戦略と組み合わされる必要があります。

何が重要で何が重要でないか、どの要素に焦点を当て、どれにはあまり焦点を当てなくてよいかを知る方法が必要です。それを考えるのに「レバレッジ」という原則が参考になります。レバレッジとは「てこの力点」というような意味で、小さな介入でもシステム全体に大きな改善をもたらすことのできるポイントをレバレッジポイントといいます。

人体のシステムは往々にして複雑でとらえがたいものなので、その複雑性を整理して問題の原因や相互関係を捉えるか。その時に使えるモデルが因果ループ図です。

ループ図の5つの構成要素 参考「なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方

ループ図を見て思い出したのが、慢性腰痛症などの説明に用いられる恐怖回避モデル1)です。ループ図の要件を完全に満たしているわけではないですが、イメージ的には近いものがあります。

このモデルの基本的な考え方は、痛みをどのように解釈するかによって、2つの異なる経路につながる可能性があるということです。急性期の痛みが脅威ではないと認識された場合、患者は日常生活への関与を維持し機能回復が促進されます。しかし、痛みの解釈の仕方が悪循環に陥る場合もあります。疾病の恐ろしい側面からの情報や不安をあおるような説明をうけると、人は痛みに関連した恐怖と、それに関連した回避・逃避や過敏症などの安全を求める行動を生み出すことがあります。急性の痛みの段階ではそれは適応的な反応ですが、慢性的な痛みの場合には問題を悪化させ、遅れて生じる障害や廃用が生じ、痛みの閾値を下げることになり慢性痛が悪循環して増強されてしまします。

ここでのレバレッジポイントは疼痛の経験に対して、[正しい情報で安心させる]ということになります。

慢性疼痛のFear-Avoidance model. 文献1)より引用 一部改変

「悪循環」ってよく説明で使ったりするのですが、その循環をループ図で図解することによって、頭の中が整理されて、悪循環を断ち切るには今どんな介入をすべきなのかがクリアーになる感じがします。システム思考は理学療法士の頭の中を整理するのにめっちゃ有益なツールですね。

参考文献
1) Leeuw M, Goossens ME, Linton SJ, Crombez G, Boersma K, Vlaeyen JW. The fear-avoidance model of musculoskeletal pain: current state of scientific evidence. J Behav Med. 2007;30(1):77-94. doi:10.1007/s10865-006-9085-0

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