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With コロナ時代のリハビリテーションのあり方を考える

本の感想や雑感

私が生きてきた35年の間で、これほどまでに世界中が不安な日々を送ることは初めてです。つい3ヵ月くらい前まではあたりまえであったことが、あたりまえではなくなり、どれだけ多くの仕事がつながりあって世界が成り立っていたのかということを思い、日々感謝の念がたえません。

最前線で働く医療従事者の方々、電気ガス水道などライフラインやその他の生活インフラを支えるために働いている方々、スーパーマーケットや薬局で販売に関わっている方々、物流を支えて日夜トラックや電車の運行をしていただいている方々、その他にも現在の生活を支えるためにそれぞれの現場で不安の中働いている方がたくさんいらっしゃると思います。ほんとうに感謝申し上げます。

私は都内の整形外科クリニックで理学療法を提供していますが、先週くらいから来院される方の人数がぐっと減って、緊急事態宣言後からは通常の3割程度となっています。

このままでは仕事がなくなってしまうので、今後のリハビリテーションのあり方について、今の「現状」をどうするかということと、「コロナ後」どうなるかという分け方で考えていたのですが、安宅和人さんのブログで下記のような記載があり、「with コロナ」という枠組みで考えたほうがすっきりするなと腑に落ちた感がありました。

「アフターコロナ社会についてどう考えるか」みたいなお題が僕ら二人に出て、即座に僕が言ったのは「アフター コロナ社会は当面来ない、”With コロナ社会をどう生きるか”こそが課題だ」ということ

そろそろ全体を見た話が聞きたい2 ニューロサイエンスとマーケティングの間 – Between Neuroscience and Marketing

この状況は少なくとも1年以上は続き、その後もコロナ前とは全く違う世の中になっていると考えられるため、新型コロナウイルスと、ともに生きる時代の新たなリハビリテーションの枠組みを考える必要があります。

3つの密からみるリハビリテーション

今後のリハビリテーションのあり方を考える上で、まず日本国内で盛んに言われている三密(密集、密室、密接)からリハビリのサービスをみる視点が重要です。厚生労働省からも下記のような推奨がされています。

「三密」(密集、密室、密接)を避けましょう。
集団感染は、「換気が悪く」、「人が密に集まって過ごすような空間」、「不特定多数の人が接触するおそれが高い場所」という共通点があります。できるだけ、そのような場所に行くことを避けていただき、やむを得ない場合には、マスクをするとともに、換気を心がけていただく、大声で話さない、相手と手が触れ合う距離での会話は避ける、といったことに心がけてください。

厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html#kokumin

「換気が悪い、密室」、「人が密に集まって過ごすような空間、密集」、「人と人との距離が近い、密接」です。リハビリでも換気が悪く、人が密に集まって過ごすような空間で実施することを避けて行うような形が求められます。

先述した安宅さんが指摘している「開疎化」というアイデアを借りてリハビリのサービスを図示したの次の図です。

開疎化とリハビリテーションの位置づけ [Curious!! Physiotherapy]

医療保険で行うリハビリテーションの形でもっとも一般的なのは、病院等で行う疾患別の個別リハビリ(1対1で行うリハビリ)です。リハビリ職と患者は密接ではあるけど、密集するかどうかはリハビリ室の広さと同時に使用する人数次第となります。換気が十分に良い状態であれば、密室状態とはなりにくいかもしれませんが、建物の構造によりけりな部分があります。ちなみに私の現職場はスペースが狭いので密集することが多かったですが、現在は患者さんの激減とスタッフ数を減らして対応しているため患者間は2m程度の距離を保てています。窓は全方位開けっ放しです。暖かい日はよいですけど、これ冬場だと結構寒くてきついかなと思うことがあります。

介護保険分野では、利用者の自宅へ訪問してリハビリを行う訪問リハと、送り迎え付きで施設に集まって行う通所リハがあります。訪問リハは基本的に1対1の対応になるので密接だが密集ではない状態です。通所リハは1対1の対応もありますが、集団で行う体操やアクティビティなどがあります。施設の実施内容がバラエティに富んでいるのでケースバイケースですが、密集状態にはなりやすいです。通所サービスについては、空間の設計と提供するサービスの両面について再構築する必要がありそうです。対象者も高齢かつ合併症ありと重症化リスクの高い方が多いのでなおさら慎重さが求められます。リスクを考慮してすでに事業を休止している施設も増えているようです。

NHKニュース  2020年4月14日

高齢者の介護予防事業に関しては、今までは「集いの場」「地域住民同士の交流」といったことを推進してきました。専門家が提供するよりも、地域で「場」ができて交流が盛んであるほうが要介護状態になるリスクも減るという研究結果もあります。しかし、現状の3密を避けるという流れは、今までの集まる「場」を作るという流れと完全に逆行してしまいます。オンライン上でそういった交流の「場」を作れるとよいですが、高齢者世代はインターネット環境が自宅に整備されていなかったり使用の経験がないことがあったりと導入までのハードルが高い印象です。バーチャルな場を作れてそこに入って行ければ面白いのですが。攻殻機動隊みたいな世界観ですね。

現実的には今後の介護予防の場の作り方として、ご近所づきあいとかの、よりローカルなface to faceのコミュニティづくりとかのほうが可能性を感じられる部分があります。都市部では失われているところなので、ご近所のネットワークをどう構築していくかは課題です。

「場」を作るとするなら、広い屋外のフリースペース、子どもも、大人も、高齢者もみんなが少し距離をとって居られる、そんな場所がいいのかもしれません。池袋にある南池袋公園みたいなスペースが都市部の色んなところに点在しているようなイメージです。

保険外のリハビリ関連のサービスとして、トレーニングジムなどで行われるパーソナルトレーニングやヨガなどのプログラムがあります。ジムやトレーニングスタジオで行う場合は密室になりますが、完全個人対応のパーソナルトレーニングであれば、密接だが密集しない状態、トレーナー1人に対して複数の利用者がいる状態では密集しやすい状況となります。複数の人がトレーニング機器を使用している状態になるとハイリスクと考えられ、現在でも多数の人が同時に利用できるようなトレーニング施設は営業できていません。よりパーソナルな個別性の高い環境でのトレーニングの提供の需要が高まりそうです。

1対多数で行われるものとして、ヨガやピラティスなどのレッスンがあります。これらは屋内ではハイリスクな状態を作ってしまいますが、屋外であれば十分にスペースをとって行うことができ安全に実施することができそうです。

個人的に、可能性を感じているのがビデオ通話を使用したオンラインの遠隔リハビリです。医師によるオンライン診療はもともと一部認められていましたが、今回のことで一気に加速して初診から遠隔診療が可能になってきています。

日本経済新聞  2020/4/10 

医療保険下のリハビリに関してはオンライン診療は認められていません。ただし海外、特にアメリカではリハビリ関連の医療に関しても電話によるフォローアップであったりオンラインのフォローアップについて実施され、さまざまな研究も報告されています。今後日本でもこの流れが起きてくると思いますし、私自身も遠隔リハビリが保険適応になる状況を作っていきたいと考えています。遠隔リハビリ関連の研究については近いうちにまとめてみようと思います。

医療保険の枠組みから離れれば、今現時点でもオンラインでYogaやパーソナルトレーニングを行っている人も多いと思います。ある程度金銭的な余裕のある人やよりハイレベルのアスリートはそういったサービスを受ける形でよいと思いますが、日本国民全体のリハビリニーズにこたえるためには、やはり国民健康保険でカバーされるサービス体系を作っていく必要があると考えます。

リハビリは命にかかわるような緊急を要する患者に対応することは少ないですが、長期的な視野を持って人生に関わっていくような側面が大きい医療です。私もwithコロナ時代に適応して、よりよい世界にしていけるよう頭と身体を使ってできる活動をしていきたいです。

まだまだ新たな課題が出てきているので、また別記事で課題についてまとめます。

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