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人工膝関節全置換術(TKA)後に残存する後外側の痛みについて ~それって膝窩筋インピンジメント?~

整形外科/スポーツ関連

人工膝関節全置換術(TKA)術後に膝を曲げた際の膝後外側の痛みが残存するケースを経験することがあります。疼痛が長引き膝屈曲の制限が残るケースもありリハビリに難渋することがあります。
今回は、人工膝関節全置換術後の膝後外側疼痛の原因の一つと考えられる後外側オーバーハングによる膝窩筋インピンジメントについて調べてみました!

人工膝関節全置換術において大腿骨側のコンポーネントが3mm以上overhungしている場合に2年後の疼痛残存リスクが増加(odds ratio1.9)することが報告されています1)。また、Bonninら2)はOversizeインプラントによるMediolateral overhungが軟部組織の疼痛と関連する可能性を示唆しました。Bonninら3)はさらに、死体研究において正常サイズのインプラントであっても膝窩筋の走行を変化させ、oversizeでは可動範囲全体を通して膝窩筋が偏移し、膝屈曲位では外側顆コンポーネントのoverhungにより膝窩筋が外側にシフトしていることを示しました。この結果より人工膝関節全置換術後の遷延する疼痛と関節stiffnessに膝窩筋インピンジメントが存在する可能性を指摘しました。


人工膝関節全置換術中に膝窩筋インピンジメント同定し外科的に膝窩筋腱リリースを行いインピンジメントが改善した報告4)があるが,膝窩筋インピンジメントに対しての理学療法の報告はありません。

インプラント自体の問題に関しては後療法である理学療法の打つ手はあまりありませんが、個人的には屈曲時の後外側疼痛が生じるケースは後外側の不安定性が伴っているような気がしています。

膝関節後外側の安定化機構としては腸脛靭帯,外側腓腹筋,大腿二頭筋,後外側膝窩筋腱,膝窩腓骨靭帯,外側側副靭帯があります。CR(cruciate-retaining)型の人工膝関節全置換術において膝外側側副靭帯が内反,内旋,外旋に対しての重要な制動要素であるとの報告がされました(それぞれ56%,28%,26%の寄与)5)。Clineら6)は複数回Revisionした人工膝関節全置換術症例の後外側回旋不安定性に対してPosterolateral cornerの再建術を実施した症例の報告をしました。

Posterolateral corner 損傷に対する保存療法の報告は少なく,人工膝関節全置換術後の後外側不安定性に対する理学療法に関する報告は検索してみましたが見つけられませんでした。人工関節以外の報告では、Lundenらのclinical commentary7)が参考になります。 Posterolateral corner 損傷に対する保存療法は患者の症状に応じて,腓骨頭のモビライゼーションやテーピング,下肢の筋力トレーニング(大腿四頭筋,ハムストリングス,膝窩筋,腓腹筋),特に下腿外旋を制動する内側ハムストリングスのトレーニングを実施することを推奨しています。

人工膝関節術後における後外側オーバーハングおよび膝窩筋インピンジメントについてまとめました。特に後十字靭帯を残すCR型の場合には,もともとの後十字靭帯による脛骨後方への制動が不十分もしくは後外側支持機構の破たんがある場合に脛骨後方への落ち込みや脛骨外旋による膝屈曲時の後外側の疼痛という可能性も考えられるのではないでしょうか。
人工膝関節全置換術に対する理学療法は必要ないという話を聞くこともありますが、痛みが長引くもしくは可動域制限がシビアな症例に対する評価と治療をもう少し出していきたいところですね。

参考文献
1. Mahoney OM, Kinsey T. Overhang of the femoral component in total knee arthroplasty: risk factors and clinical consequences. The Journal of bone and joint surgery American volume. 2010 May;92(5):1115-21. Epub 2010/05/05.
2. Bonnin MP, Schmidt A, Basiglini L, Bossard N, Dantony E. Mediolateral oversizing influences pain, function, and flexion after TKA. Knee surgery, sports traumatology, arthroscopy : official journal of the ESSKA. 2013 Oct;21(10):2314-24. Epub 2013/02/14.
3. Bonnin MP, de Kok A, Verstraete M, Van Hoof T, Van Der Straten C, Saffarini M, et al. Popliteus impingement after TKA may occur with well-sized prostheses. Knee surgery, sports traumatology, arthroscopy : official journal of the ESSKA. 2017 Jun;25(6):1720-30. Epub 2016/09/28.
4. Kazakin A, Nandi S, Bono J. Diagnosis and treatment of intraoperative popliteus tendon impingement. The journal of knee surgery. 2014 Dec;27(6):485-8. Epub 2014/01/30.
5. Athwal KK, El Daou H, Lord B, Davies AJ, Manning W, Rodriguez YBF, et al. Lateral soft-tissue structures contribute to cruciate-retaining total knee arthroplasty stability. Journal of orthopaedic research : official publication of the Orthopaedic Research Society. 2017 Sep;35(9):1902-9. Epub 2016/11/20.
6. Cline JT, Alentorn-Geli E, Choi JH, Stuart JJ, Kruger T, Moorman Iii CT. Posterolateral Corner Reconstruction Alone Using a Fibular-Based Technique in a Patient with Persistent Unstable Revision Total Knee Arthroplasty. Case reports in orthopedics. 2015;2015:262187. Epub 2016/02/18.
7. Lunden JB, Bzdusek PJ, Monson JK, Malcomson KW, Laprade RF. Current concepts in the recognition and treatment of posterolateral corner injuries of the knee. The Journal of orthopaedic and sports physical therapy. 2010 Aug;40(8):502-16. Epub 2010/05/19.

 

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