スポンサーリンク

シンスプリント(Medial Tibial Stress syndrome)の発症に関わる運動学因子

整形外科/スポーツ関連

シンスプリントはランナーに多く発症する、下腿のオーバーユースによるケガのひとつです。脛骨内側の痛みが主症状であり、中高生のアスリートはすねが痛くなるとすぐにシンスプリントだと言われていたりしますね。私も高校時代に野球をやっていた時にもシンスプリントという名前を知っていましたし、冬場のラン系のメニューが多くなる時期に実際にすねが痛かった記憶もあります。

日本ではシンスプリントという名称が一般的ですが、英語ではMedial Tibial Stress Syndrome;MTSS(脛骨内側のストレス症候群)という名称で「虚血性疾患や疲労骨折による痛みを除く、運動中に生じる脛骨後内側縁に沿った痛み」と定義されています1)

基本的には安静、運動量の調整およびマッサージ、ストレッチ、テーピング、足底板などの保存療法で予後は良好となることがほとんどですが、ランナーはトレーニング量を落とすことを嫌うので、疼痛がありつつトレーニングを継続して改善まで時間を要すケースが多いです。また、疲労骨折の場合には対応が異なる場合があるので脛骨内側のピンポイントの強い圧痛や脛骨前方の圧痛、強い腫脹などがある場合には医療機関を受診して医師に診断および経過をみてもらうほうが良いです。

内因性リスク因子として、1) BMIが高い、2) 荷重時の舟状骨降下が大きい、3) 足関節底屈可動域が大きい、4) 股関節外旋可動域が大きい、5) 女性、といったことが報告されいています2,3)

今回は、ランニング中の骨盤帯を含めた運動学的なリスクファクターについて前向きに検討した論文4)を読んだのでまとめます。個人的には臨床的な示唆も多くもらえて面白かったです。

▸対象
NCAA Division 1 クロスカントリーランナーの1チーム 24名。 プレ測定を行ったプレシーズン時点で筋骨格系の問題のない者

▸方法
2年間の追跡調査。期間中のケガについて記録。MTSSを発症した群と発症しなかった群に分けて解析。

▸計測項目

・他動可動域(ハムストリングス;SLR、腸脛靭帯;Ober test、股関節伸展;Thomas test、内外旋、足関節)
・筋力(股関節外転、伸展、内外旋)
・歩行中の足圧
・走行中の三次元動作解析で立脚期中の各角度のピーク値(骨盤の傾斜、股関節内転、内旋、後足部外反;Eversion)と後足部外反速度のピーク、立脚期中の後足部外反位の期間(%)を算出

▸結果

24名中7名がMTSSを発症。MTSS発症群と発症していない群間で年齢、身長、体重、週ごとの走行距離、走行速度は差なかった。
MTSS発症群(MTSS)は発症していない群(CON)と比較して、下記のような特徴がありました。

身体機能面
では、

  • 腸脛靭帯タイトネス(MTSS: 10.0±4.9°, CON: 16.8°, p=0.46, ES=1.071)
  • 股関節外転筋低下 (MTSS: 16.03±3.61 N/kg, CON: 23.04±5.46 N/kg, p < .001, ES = 1.51)
  • その他筋力、可動域に差なし

動作解析では、

  • 足底内側面の接触圧↑(Initial Contact, Foot flat, Heel off)
  • 走行中の対側骨盤下制ピーク値が大きい(MTSS: -6.43±1.39, CON: -4.64±1.41, p=0.21, ES=1.281)
  • 立脚期における後足部外反が大きい(MTSS: -8.16±2.90, CON: -5.08±1.97, p=0.34, ES=1.265)
  • 後足部外反期間が長い(MTSS: 79.58±9.08, CON: 55.77±11.27, p<.001, ES=2.340)

回帰分析の結果、後足部外反期間が1%増加するとMTSSのodds 1.38上昇 (p=.015, 95% CI: 0.89 – 2.14)。

 

人数少なく、大学1チームのトップレベルの選手のみを対象というところがlimitationですが、prospectiveに2年間の調査を行ったというのは貴重ですね。MTSSの発症に関してはまだ議論のあるところですが、後脛骨筋や長趾屈筋によるストレスや深部筋膜の関与の説があり、後足部外反の期間が長いことや足部の内側接触圧が高いことは、リスクと関連するというのはうなずけます。単純に考えれば、足底板やテーピングなどで足部のアライメントを変えて後足部の外反と舟状骨低下を減少させるということがひとつの治療方向性です。
ただ、今回の研究でより近位の骨盤の対側傾斜の増加、股関節外転筋力の低下、腸脛靭帯タイトネスもリスクになり得るということを考慮すると、体幹~骨盤帯からの運動連鎖も考慮したうえで治療を行う必要がありそうです。実際には、地面-足部といった下からの運動のつながりと体幹-骨盤帯といった中心部からの運動のつながりを分けることはできないので、個々の選手の状態を評価して必要な治療を行っていくことが必要と思います。

参考文献
1. Yates B, White S: The incedence and risk factors in the development of medial tibial stress syndrome among naval recruits. Am J Sports Med. 2004; 32: 772-80
2. Hamstra-Wright KL, Bliven KC, Bay C. Risk factors for medial tibial stress syndrome in physically active individuals such as runners and military personnel: a systematic review and meta-analysis. British journal of sports medicine. 2015 Mar;49(6):362-9. Epub 2014/09/05.
3. Reinking MF, Austin TM, Richter RR, Krieger MM. Medial Tibial Stress Syndrome in Active Individuals: A Systematic Review and Meta-analysis of Risk Factors. Sports health. 2017 May/Jun;9(3):252-61. Epub 2016/10/13.
4. Becker J, Nakajima M, Wu WFW. Factors Contributing to Medial Tibial Stress Syndrome in Runners: A Prospective Study. Medicine and science in sports and exercise. 2018 Oct;50(10):2092-100. Epub 2018/05/23.

コメント

タイトルとURLをコピーしました