先日、友人がランニングしていて膝が痛むというので業務外でちょっと状態を診る機会がありました。ちょっと珍しい膝蓋下脂肪体のインピンジメントを疑い、テーピングしてみたらかなり改善したので備忘録としてまとめておきます。
主訴は片側膝伸展時の膝前面疼痛で、安静時痛はないが歩行時およびランニング時の膝を伸ばした時に痛いということ。階段昇降は疼痛なし。
現病歴は受傷機転特になく、1ヵ月くらい前から徐々に痛みだしてなかなか治らない。既往歴は両足関節捻挫あり、膝周辺のケガなし。
視診; わずかに膝蓋腱周囲の腫脹あり、発赤なし。
触診; 膝蓋腱周囲熱感軽度あり。膝蓋跳動なし。
圧痛; 膝蓋骨下極なし、膝蓋腱中央部なし、膝蓋腱外側あり、内外膝関節裂隙なし。
膝関節可動域; 屈曲制限なし、伸展0°(疼痛あり)、Heel height difference 1cm)。
MMT; 膝伸展で軽度低下
スペシャルテスト; 靭帯のストレステストすべて陰性、Patellar Grind test陰性、マクマレーテスト陰性。
業務後のちょっとした時間にささっと評価しただけなので、画像所見や医師の診断はありません。
評価から他動的な膝伸展でも疼痛誘発され疼痛部位は膝蓋腱やや外側、同部位に圧痛もある。膝蓋大腿関節と半月板は疼痛部位とテスト結果、症状から可能性は低い。可能性の高い組織としてひょっとして膝蓋下脂肪体?伸展位で疼痛が惹起されるのも合致する。と思ってずっとやってみたかったテーピングを貼ってみました。
やってみたテーピングがこちら。
膝蓋大腿関節症の膝蓋骨テーピングが有名なMcConnellらのグループが出している方法です。紹介されている方法は皮膚を保護するベーステープを貼ってから固いテープで膝蓋下脂肪体を操作しています。同じテープは手元になかったので、とりあえずややリジッドなホワイトテープでやってみました。
上記写真の手順①の前に膝蓋骨近位1/2テープをかけて大腿遠位に貼ります。これは膝蓋骨のポジションを修正する目的です。①で脛骨粗面から大腿骨内側上顆にかけてテープを貼り軟部組織を膝蓋骨方向に持ち上げています。同様に脛骨粗面から外側上顆に向けて張り”V shape”にします。
これで症状が軽減しない場合は、②のように脛骨後方から前方へ持ち上げるようにテープを貼ります。
完成形が③です。膝蓋下脂肪体部分が持ち上がっているような状態になります。
この状態でMRIを撮ると下図の右のように膝蓋下脂肪体が持ち上げられたようになるようです。
私もこの方法にのっとってやってみましたが、写真のようにしっかりと持ち上がるようにするのはなかなか難しかったです。
テープの選択も固いテープを使用するので、膝屈曲制限が出てしまうのが少し困るところですね。
実際に友人の膝にテーピングしてみてから、膝伸展方向へ他動的に強制したところ疼痛が改善していました。歩行時痛も軽減していて、歩行のターミナルスイングでの膝伸展時の疼痛がなくなって歩容も改善しました。
正直なところそこまで即時効果があると思わずやってみたので、リアクションの良さに驚きました。
翌週にまた友人に会った時にはテーピングなしでも疼痛がない状態まで改善していました。
テーピングでADL上の疼痛がコントロールでき、炎症も治まり疼痛が減少していったと思われます。
実際に症状のある方を担当するとしたら、運動療法も加えてアライメント修正なども図っていく必要がありますが、最初の一手としてテーピング使えますね。
膝関節伸展時に膝蓋下脂肪体周囲の疼痛を訴えるケースを経験する際にまたテーピングを使って効果をみてみようと思います。
参考文献
Jason L. Dragoo, Christina Johnson, Jenny McConnell. Evaluation and Treatment of Disorders of the Infrapatellar Fat Pad. Sports Med 2012; 42 (1): 51-67
【以下追記(2020/06/20)】
McConnell さんのOfficial youtube がありました!今回のFat Padに対するテーピングもあったので載せておきます。動画で見るととても分かりやすい!
使用しているテーピングはおそらくロイコテープといわれるレーヨン製のテープですね。あとはベースに張っているのが粘着性伸縮包帯のカバーロール。Amazonでも購入できます。
LINDSPORTSというメーカーがより安価でレーヨンテープを販売しています。これ買って使ってみましたが十分使用に耐えますね。Amazonでも売ってますが、LINDSPORT公式ページのからのほうが安いです。送料がかかるため他のテープなどもまとめて買うなら公式ページからのほうが良いですね。
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